目黒 陽介 率いるジャグリングを中心としたショーを作るカンパニー ながめくらしつ。 4月の公演『おいていったもの』 [レビュー] が良かったこともあり、年末のこの公演にも足を運んでみた。
2部構成の前半『誰でもない』は、オーディションで選んだ10名のジャグラーによる約30分のショー。 様々なオブジェを使ったり、派手な大技を見せるというのではなく、 『誰でもない』というタイトルに暗示されているのか、衣装からして個々のジャグラーの個性を見せるような場面も少ない。 上下するボールに合わせるようなピアノの伴奏に合わせ、 2〜3個の白ボールのジャグリングをベースに複数人の組み合わせで様々なパターンを構成していく。 特に、目を引いたのは、輪になって歩いたり、2つの半円の列が交錯するように歩いたりしながら、 一つ余ったボールを受け渡していくような展開。 だた、流れるような展開過ぎて、少々メリハリに欠けたようにも感じた。
後半はジャグリングだけでなく、エアリアルやダンス、アクロバットも組み合わせてのショー。 明確な物語はなく、形とその動きで繋いでいくような1時間半。 シアタートラムの空間を得て、『おいていったもの』で物足りなく感じた奥行き使いが改善されていた。 しかし、最初のうち、フック状のスタンドを並べて動かすような場面では、 同時多発的に舞台で何か起きているようで、フックばかりが前に出て来て、 リングのエアリアルが最も奥まった所で行われたり。 フック状のスタンドがメインで、同時多発的に起きているパフォーマーの動きが背景のよう。 スタンドもすぐに奥に仕舞われ、せっかく広い舞台の奥を狭く使っているようにも感じられた。
しかし、後半、L字状に組み合わされた木製のつい立てが出て来た頃からだいぶ良くなって、 その合間から出て来た机と椅子を使っての 谷口 界 のソロ・アクロバットの場面から、 そのシャープな動きにぐっと引き込まれた。 そして、長谷川 愛実 のティシューのエアリアル。 バーバラ村田 と 塚田 次実 による水平方向の布の動きを導入に使い、 さらにエアリアル中も2人がティシューを操作し、縦横だけでなく斜めの線や回転などを作りだしていた。 最後は、余韻のような 目黒 のジャグリングだった。
『おいていったもの』に比べて動きの要素もオプジェのパターンも増えたせいか、 アクロバット、エアリアルからジャグリングの展開に、統一感ある流れがあまり感じられなかったのが少々残念。 前半も含めて、もっと巧くやれたのではないか、などと思いながら観ていたのだけれど、 それも『おいていったもの』を観て、期待のレベルが上がってしまっていたからだろうか。