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Review: Heinz Karl Heiland, Zammu Kako [賀古 残夢] (dir.): Bushido, das eiserne Gesetz 『武士道』 (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2015/01/10

神保町シアターの特集 『痛快!豪快!娯楽の殿堂!無声ちゃんばら映画傑作選』 も二週目。 ピアノ伴奏 天池 穂高、弁士 片岡 一郎 で、この無声映画を観てきました。

Bushido, das eiserne Gesetz
『武士道』
1925 / Deutsch-Nordische Film-Union = 東亜キネマ等持院 / 白黒 / 62min.
Regie: Heinz Karl Heiland, Zammu Kako [賀古 残夢]
W. Ahashi [明石 潮] (Reinosuke), Tsuyako Okajima [岡島 艶子] (Shizuka), Carl W. Tetting (Manuel), Loo Holl (Eva), etc

Die neue Erde 『新しき土』 (1937) に先立つこと12年、 1925年に日独合作された無声映画。 鉄砲伝来のエピソードに着想した、日本とドイツの2組のカップルの恋愛を、 世話になった親切な領主と悪意ある隣の領主との戦いも交えて描いた、時代劇的な恋愛活劇映画。 『新しい土』でも神道と仏教が混同されていたりしたので [レビュー]、 ある程度予想 (というか期待) はしていましたが、それを上回るデタラメさでした。 時代考証の考え方も現在と違ったでしょうし、当時はデタラメをやっている程ではなかったのかもしれませんが。

鉄砲伝来は戦国時代の話ですが、画面に見られる服装や風習などは、 吉原の描写といい、ほとんど江戸時代と思われるもの。 隣の領主に捉えられたドイツ人の女性が、殿と見ることになった「能」が歌舞伎だったり。 世話になった領主の名が「頼朝」と鎌倉時代的な要素も紛れていました。 しかし、現代劇ではなかったせいか、 むしろデタラメな描写も「中世ファンタジー」の類のものとして、 『新しい土』の時のような否定的な印象は受けませんでした。 この映画のどこが『武士道』を描いているのやら、とは思いましたが、 お城での戦闘シーンといい、ドイツ人女性が城から逃げ出す場面といい、なかなかのアクション。 デタラメな日本描写に珍品の味わいもある恋愛活劇映画として楽しみました。