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Review: 『幻想絶佳 ― アール・デコと古典主義』 @ 東京都庭園美術館 (デザイン展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2015/03/01
Fantaisie Merveilleuse: Le Classicisme dans l'Art Déco français
東京都庭園美術館
2015/1/17-2015/4/7 (毎月第2,4水休), 10:00-18:00.

『アーキテクツ/1933/Shirokane アール・デコ建築をみる』 [鑑賞メモ] に続いて開催されているリニューアルオープン記念展は、 東京都庭園美術館の建物 (旧朝香宮邸) の内装を担当した Henri Rapin や、 1925年のアール・デコ博 (L'Exposition International des Arts Décoratifs et. Industriels Modernes) のコレクター館 (Le pavillon du collectionneur) に参加した 古典主義的な傾向を持つフランスの Art Déco のデザイン、壁画、彫刻などの装飾美術を集めた展覧会。 いままで観てきた Art Déco のデザインが戦間期の Modernism 色濃いものに偏っていた ということを反省させられる展覧会でした。

Art Nouveau が1900年のピークを過ぎた第一次世界大戦の直前、 Art Déco の最初期の「1910年様式」では、古典主義的な傾向が強かったとのこと。 それに関する展示に、今まで見逃しがちだったこの時代の一面を見るようでした。 『魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展』 (国立新美術館, 2014) [鑑賞メモ] の衣装が1913年まで古典主義的だったことの背景に気付かされ、 なるほど、あれは Art Neauveau の末期ではなく、1910年頃の流行である古典主義を反映したのものだったのか、と、腑に落ちました。

また、展示のストーリーにうまく乗っていないようにも思いましたが、 第一次世界大戦時に組織された「カモフラージュ隊」に参加した 彫刻家 Henri Bouchard が手帳に残したアイデアのスケッチも面白く、 デザインと戦争の関係にも興味を引かれました。

このように勉強になった展覧会でしたが、展示として楽しめたのは、一階と二階にそれぞれあった 「ラパンの食卓」「デュパのティー・タイム」という展示作家 (Henri Rapin と Jean Dupas) に着想した食卓のアンサンブルやティー・セットの展示。 元が住居空間で、同時代の同傾向のデザインなだけに、このような展示は雰囲気が出ます。 建築展による空間再現というほどの作り込みではないですが、 このようなデザインがどのように使われたいたのかその雰囲気を想像させるものがある、キャッチのある展示でした。