鈴木 理策 は熊野を題材とする作品を多く撮っている1990年代以降に活動する写真家。 「SAKURA」シリーズなど目にする機会はそれなりにあったものの、 2007年の東京都写真美術館での個展は見逃しており、今まであまり引っかかりが無かったのも確か。 しかし、今回の展覧会は抽象度が高い写真が多く集められており、かなり好みの展覧会でした。
パンフォーカスではなく焦点深度浅く背景や手前の物をボカすような画面作りを多用するので そうとは思っていなかったのですが、 4×5in判 (シノゴ) より大きい8×10in判 (エイト・バイ・テン) を使っていたと気付かされました。 桜の花を撮った「SAKURA」シリーズや花壇の花を撮った「Étude」シリーズのように手前にもピンボケながら写し込んだり、 「水鏡/Water Mirror」シリーズのように水面で揺らぐ風景を撮ったり。 パンフォーカスで風景や建物を幾何図形のように抽象化して撮影するのとは違う、 ピンボケや揺らぎを使った奥行き感のある自然風景の抽象化のあり方があるのだなあ、と、気付かされた写真展でした。
2007年の第一回が良かったので期待していたのですが、今回はピンときませんでした。 確かに現代的な風俗を捉えた写真は少ないのですが、色や形の面白さを楽しむような写真作品も少なめで、 写真を使ったコンセプチャルなインスタレーションや物語性の強い演出写真が目立ったようにも感じました。 もちろん、そのような文脈にも写真の可能性があるとは思いますが、どうも自分の現在の関心とすれ違ってしまったよう。