ブラジル・リオデジャネイロを拠点とする Deborah Colker 率いるダンス・カンパニーの久々の来日公演は、 Luis Buñuel によって映画化 (1967) された小説『昼顔』 (Joseph Kessel: Belle de jour, 1929) に着想しという作品。 前に観た Rota が体操やアクロバットの動きを駆使した物語の薄い舞台だったので [レビュー]、 物語バレエかと思うような舞台は意外だったけれども、動きのキレも良いダンスが楽しめた。
娼婦 (Belle) という一面を持つブルジョワの夫人 Séverine の物語ということで、 ブルジョワ夫人という面をバレエで、娼婦という面をバーレスクとして表現したような舞台でした。 前半はブルジョワ夫人としての面を描いたもので、ブルジョワの邸宅の居間を抽象化したような舞台での、 原作の戦間期というよりミッドセンチュリーを思わせる衣装でのバレエでした。 Séverine 役のプリマや夫役もいましたが、新体操的にも感じるキレの良い踊りは、ソロやデュオより群舞の方が見応えありました。
途中から白い面をして匿名化された男性ダンサーが登場し、次第に不穏な展開に。さらに伸縮する白い布が張られて、 Séverine がそこに絡め取られていくという。 布越しに手足や顔、身体を突き出したり、布越しにリフトしたりという中に、ブルジョワ夫人から娼婦へという変化が描かれていました。
後半は娼婦の世界ということで、ランジェリー姿でポールダンスなどのバーレスクダンスを基調としたダンス。 といっても、その動きのキレの良さのせいか、あまりエロティックには感じませんでしたが。 そして、最後にはブルジョワ夫人なトレンチコート姿に戻って、ブルジョワの世界に戻っていく所で終わりました。 後半舞台が暗くなったことと、バレエ的な動きに比べて群舞が揃わずには映えないせいか、 前半のバレエに比べてとりとめない印象になりました。
前半ブルジョワ世界をバレエで、後半娼婦の世界をバーレスクで描き、その変化を布を使った場面で描くなど、 かなりわかりやすい構成で、もう少し抽象度が高くてもよいかと思いましたが、 身体能力の高い男女がその世界を踊りまくるという舞台として、十分に楽しめました。