アニュアルで開催されている、美術を中心として周辺の文化等も取り上げる展覧会の第6回は、 6組のキュレーターによるサブ展覧会と4組の作家の新作展示を組み合わせた構成。 今回は「80年代の文化の命脈」を見せる展覧会ということで、いきなり Yellow Magic Orchestra の資料展示があり、少々懐古的な面も感じた。 むしろ、岡田 利規 の「飛べなくなった魔法の絨毯」のように、1980年代の「魔法」に対して「失われた十年」以降的な皮肉な視線の方が良いと思ったが、 「魔法」と言ってしまうと「失われた十年」の経済政策の無策を受容してしまうようで、そこが引っかかった。
新作の中では、以前に資生堂ギャラリーでの展示を楽しんだ [関連レビュー] 目【め】による「ワームホールとしての東京」。 三階のギャラリーが、どこかのビルの地階の通路のような所に繋がっており、 それがさらに1980年代というより高度成長期前の昭和の公園の夜道のような所に繋がっているという。 半ば力技で異空間を作り込んで無理やり繋げることによる不条理感を楽しんだ。
1950年代から Fluxus 界隈等のコンセプチャル・アートの文脈で活動し、 また、The Beatles の John Lenon と結婚し Plastic Ono Band など音楽活動でも知られる作家の回顧展。 展覧会として音楽活動の展示は控えめに、はコンセプチャル・アートの部分に焦点を当てて1950年代から現在に至る足取りをたどる内容。 初期の作品の資料など興味深く観たが、現在の自分の興味とすれ違った感もあり、あまりピンとこなかった。 1990年代であれば楽しんで観られたかもしれないが。
常設展示室では、アトリウムを使って 大友 良英 + 青山 泰知 + 伊藤 隆之 「without records - mot ver. 2015」が展示されていた。 「without records」は以前に観たことがある作品だが [レビュー]、 美術館の吹き抜けのような空間で観ると、ジャンクっぽさが抜けてスタイリッシュ。 この作品も美術館収蔵か、と、感慨深いものがあった。