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Review: Carl Theodor Dreyer (dir.): Der var engang [Once upon a time] 『むかし、むかし』 (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2016/02/08

ユーロスペースで開催中の トーキョーノーザンライツフェスティバル 2016 のプログラムで、ピアノ生伴奏付きサイレント映画上映を観てきました。

Der var engang
『むかし、むかし』 [Once upon a time]
1922 / Sophus Madsen Film (Denmark) / 78 min / 白黒 / サイレント.
Director: Carl Theodor Dreyer.
Cast: Clara Pontoppidan (Prinsessen af Illyrien), Svend Methling (Prinsen af Danmark), etc.

La Passion de Jeanne d'Arc (『裁かるるジャンヌ』, 1928) で知られる、デンマークの映画監督 C. Th. Dreyer の初期の作品です。 Holger Drachmann の戯曲に基づくということですが、 Hans Christian Andersen や Brüder Grimm の童話を連想させられるような、 中世〜近世のお姫様、王子様が主人公の童話風の物語でした。 求婚者を拒み続ける傲慢なイリヤのお姫様に、デンマークの王子が精霊に教わった策でアプローチするというもので、 乞食に身をやつした王子の策にはまり、王国を追放されたお姫様が、 乞食 (実は王子) との焼物小屋での貧しい生活を通して贅沢や娯楽以外の人生の意味を知り、 最後にはデンマーク王子の妃となる、というもの。 このお姫様の変化は少々教訓臭く感じましたが、これも時代でしょうか。

フィルムが完全に残っておらず仕方ないのですが、欠落部が予想以上に多かったのは残念。 Dreyer ということで期待したのですが、画面作りもカットもまだ素朴なもの。 架空の中世といった舞台設定で、去年の Gunnar Sommerfeldt: Markens grøde [鑑賞メモ] のような、その国の歴史を見るような感じでもありませんでした。 ピアノ伴奏の助けもあって、飽きずに最後まで楽しめましたが、いまいちピンとくる所が無かった鑑賞でした。