In The Country はノルウェーの jazz/improv の文脈で活動するトリオ。 メンバーの一人、piano/keyboards の Morten Qvenild は Susanna & The Magical Orchestra や Jaga Jazzist での活動で知られる。 今回は『トーキョー ノーザンライツ フェスティバル 2015』内の企画として、サイレント映画を上映しつつ伴奏するという形でのライヴを行った。 去年もホールを会場として同様の企画 [レビュ―] があったが、 今回はライブハウスが会場で、スクリーンも小さく低く観づらいもの。ライブが主で映画は従という内容だった。
上映された Markens grøde は、 ノーベル賞作家 Knut Hamsun による小説に基づく1921年のノルウェーのサイレント映画。 単身でノルウェーの原野に開拓に入った男の半生を描いている。 妻を得て子を得て、隣人を得て、銅鉱で次第に町が大きくなって、子供が結婚するまで。 妻が自分と同じ障害を持って生まれた娘を生後すぐに殺して服役したりと展開に起伏はあるが、 四半世紀近い時間を1時間半で描くこともあり、心理描写は浅く、むしろ、創世神話のような寓話的な内容。 しかし、ロケ撮影されたノルウェーの原野の様子も興味深く観ることができた。
In The Country の伴奏は、映画を観ながらの即興、もしくは、映画のために新作を作り込んだような内容ではなかった。 いわゆる piano trio な編成での演奏だが、流麗に曲を聴かせるというより、 物語の淡々と展開するような所はビートを効かせて速度感を出したり、 娘の殺害が見付かる場面など即興色濃くアウトな展開で緊張感を高めたり。 基本はアコースティクだけど、電子音の効かせ方も絶妙だった。 淡々と話が進むような寓話のような展開なのに、妙にドラマチックに感じるときもあり、 演奏で映画に引き込まれるようだった。
ライブ演奏がメインで映画をちゃんと観る環境ではないということは、会場から予想していた。 実際そうだったのだけれど、期待以上に映画に観入ってしまった。 それだけに、もっとまともな上映環境のある会場で観たかったと、つくづく思ったライブだった。