服飾史の研究者 石山 彰 のブック・コレクションに基づく展覧会。 16世紀以降の服飾史関連資料とのことでしたが、 メインはファッション・ブックやファッション・プレート (版画) が発行されるようになった 18世紀末のフランス革命前後から20世紀初頭戦間期にかけてのフランスの上流階級の女性の服。 資料と合わせて、神戸ファッション美術館所蔵の同時代の衣装が並んでいました。 20世紀以降のファッション史については書籍や展覧会で触れる機会がそれなりにありましたが [関連発言]、 フランス (を中心とした欧米) の19世紀ファッション史は疎かったこともあり、とても勉強になりました。
盛った髪型にパニエ (panier) で横広がりの18世紀末のロココ (Rococo) の正装 Robe à a la française から、 フランス革命を経て帝政スタイル (Robe style Empire) のコルセット無しでスラリとしたシュミーズ・ドレス (chemise robe)。 王政復古期の1830年代以降、再びスカートが膨らむロマン主義時代のスタイルを経て、 そして、1950年代にはクリノリン (crinoline) で大きくスカートを広げるスタイル、 続いて、1970年代にはヒップを強調するバッスル (bustle) のスタイルへ。 そして、1890年にはアール・ヌーヴォー (Art Nouveau) のS字のシルエットとなり、 戦間期にはシンプルなアール・デコ (Art Deco) になる、という。 こういったスタイルの変遷が、資料だけでなく衣装の展示も含めて見て掴むことができたのは収穫でした。 こういう違いがわかると、今後、19世紀美術を観る際に、描かれた女性の服装をチェックして楽しめそうです。
18世紀以前の資料は服飾風俗を伝える服飾誌的なもので、これも近世の博物学と並行するものなのだろうなあ、と。 日本についても、江戸から明治にかけての浮世絵などの資料が展示されていました。 疎い分野だったこともあり、興味深く見ることができましたが、 現在の服飾デザインに通じるものとして良いと感じるのは戦間期以降だな、ということも再確認した展覧会でした。