カナダ・ケベック州モントリオールを拠点とするサーカス Cirque du Soleil の Totem 東京公演を観てきました。 現代的なサーカス・パフォーマンスを目当てに自分が大道芸をよく観るようになった1990年代半ば頃から Cirque du Soleil のことは度々耳にする機会がありましたが、観に行くきっかけが無く観そびれていて、今回初めて観ました。 映像や照明でトリッキーな演出をする現代演劇の演出家 Robert Lepage [鑑賞メモ] が作・演出を手がけているということで、それが今回観に行くきっかけとなりました。
劇場公演で観るような作品性の高い現代サーカスの作品と比べると、 比較的独立性の高い個々の演目を、アクロバティックな演目とコミカルなクラウンの演目を交えつつ、 ある世界観を使って緩くまとめ上げたもの。 Lepage のような演出家を使う程なので、もっとガッチリと構成・演出された作品になっているかと構えていましたが、 普通にエンターテインメント的なサーカス・ショーでした。 照明や映像を駆使したところが現代的と言えるかもしれませんが、 最近の大規模なエンターテインメント・ショーとして見れば標準的でしょう。 緑や青、蛍光などの不自然に立体的なライティングに Lepage らしさを垣間見ましたが、 トリッキーと感じるような映像使いはありませんでした。
むしろ、Lepage というと、電話使いも象徴的な都会の孤独な男の感傷を描いた舞台という印象が強かったので、 現代社会を舞台としておらず、人類の進化と文化の多様性、それも西洋近代化以前の文化をテーマとしていたのも、かなり意外でした。 このようなハイテンションなエンターテインメント・ショーを演出できるのか、と、感慨深いものがありました。
個々の演目は、類した技を大道芸フェスや他の現代サーカスの公演で観たことがあるものでしたが、 難易度や完成度が高いものが多く、音楽や照明も良い状態です。 男性2人女性1人の吊り輪でのダイナミックにスイングさせるながらの Rings Trio や 空中ブランコ上で揺らさずに男女がハンド・トゥ・ハンド的な空中アクロバットを見せた Fixed Trapeze Duo “Lovebirds” のようなエアリアルの演目は特に、 このように演出された場で観た方が格段に映えます。 小ぶりのフープを使った女性 Hoops Dancer のダンスのキレの良さも印象に残りました。 高い一輪車の上でボウルを使った芸を見せた Unicycles and Bowls など中国雑技でお馴染みですが、 衣装や音楽を変えることでこう織り込むことができるのか、と、新鮮な印象。 完成度の高いエンターテインメント・ショーとして充分に楽しむことができました。