FACT/FESTIVAL 2014 で来日したフランスのコンテンポラリー・サーカス Camille Boitel / Compagnie L'Immédiat の再来日公演は、 2003年に初演した作品を、2015年以来再演しているもの。 非常に薄暗い舞台の中、女装した Boitel が登場。 テーブルの折り畳みの脚のようなものを2組立てて、それに簀子のような天板を渡し、そのテーブルに向かって椅子に腰掛けようとするのだが、 不器用で上手くいかないどころか、脚は絡むは、椅子の座面は割れてしまうわ、と上手くいかない。 やがて、大量の脚を用意して、大混乱に陥ってしまう。 前回観た L'Immédiat [ビュー] と同様、 Boitel の好きなパターンなのだろう。 途中、大きな黒服の女性姿になっての謎のマイクパフォーマンスを挟み、最後には大量の脚も秩序をもって並べられるのだが。
不器用さとそれをなんとかしようとして混乱が拡大していく様で笑いを取るというのは、 Jacques Tati の Monsieur Hulot を挙げるまでもなく、ヴォードヴィル芸でよくあるもの。 しかし、それであからさまに笑いを取りにいくのではなく、 旧約聖書の『ヨブ記』にある「善人の受難」であるとタイトルを掲げて、 抑えた照明と控えめな音響もあって宗教的な受難であるかのような雰囲気も作りだしてしまう、そのギャップが面白かった。 脚を積み上げた所から、そして砂を被ったことにより Boitel 自身から 舞い上がる細かい砂埃が照明に当たって揺らめき広がる様も、 ドタバタの余燼が宗教的な崇高さにすり替えられたようだった。