1990年代後半から electronica のミュージシャンとして Alva Noto 名義で活動している ドイツのミュージシャン Carsten Nicolai は、 本名名義で現代美術の文脈でも音や映像によるインスタレーション作品を制作している。 日本でも度々展覧会に参加しており [関連レビュー]、 その作品を観る機会はそれなりにあった。 今回の個展はデパートの特設会場でのもので、売場の一角を使っての展示かと思いきや、入口も設けて隔離されたスペースを作っての展示だった。
メインの作品は “reflektor distortion”。 それぞれ白と黒に塗られた直径2mはあろ浅いパラボラ (回転放物面) の金属板が2枚、下に凸となるように置かれ、中央に薄く水が張られていた。 パラボラは回転軸を軸に回転しており、遠心力と摩擦で水は歪みながら中央を凹ませ広がっていた。 回転速度は変化しているため水の広がりや歪みは絶えず変化し、 パラボラの裏面に付けられたスピーカーが発する可聴音以下の低音が、時折、水面にさざ波を立てていた。 背景の壁はそれぞれパラボラの色と反対となるように白と黒に塗られ、蛍光灯が縦縞のように並べられていた。 水面に映る蛍光灯の光の縦縞の歪みが、水面の歪みを際立たせていた。 色彩を抑えたシンプルな形状のセッティングで水面の歪みを際立たせるミニマリズムが美しく、 つい水面を見続けてしまうような作品だった。