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Review: 『第9回 恵比寿映像祭』 (Yebisu International Festival Art & Alternative Visions 2017) @ 東京都写真美術館 界隈 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2017/02/26
Yebisu International Festival Art & Alternative Visions 2017
東京都写真美術館, 恵比寿ガーデンプレイス センター広場, 日仏会館 ほか
2017/02/10-02/26, 10:00-20:00 (2/26 10:00-18:00)

東京都写真美術館改装休館中はガーデンプレイス界隈で開催していたアニュアルの展覧会が、 久しぶりに東京都写真美術館へ帰ってきた。 ザ・ガーデンホールなどで展示していた時は [関連レビュー]、 雑然とした仮設の展示スペースということもあり、 進行中のプロジェクトの記録の展示のようなものも多く、映像作品意外の印象が強かった。 しかし、整った美術館が展示の中心に戻り、映像作品がメインのアニュアルの大規模企画展に戻った。 特に、今回は、コンテンポラリーダンス等のパフォーミングアーツを題材に採った、 単にダンスのドキュメンタリーに止まらない作品が多く、それが印象に残った。 以下では、印象に残った作家、作品について。

最も印象に残ったのは、オーストラリアを拠点に活動する Gabriella Mangano & Silvana Mangano。 コンセプチャルなコンテンポラリーダンス的な動きを黒い衣装、白い背景、固定カメラのモノクロ動画でミニマルかつスタイリッシュに動画化していた。 2Fに展示されていた If...so...then (2007) は、 向かいの壁に手が届くほどの狭いスペースに2人の女性が入り、 向かいの壁にリズミカルに線を描いていく様子を捉えたもの。 淡々とした表情で手や顔がパズルの様にトリッキーに組み合わされて動く様は、ずっと観ていても飽きないものがあった。 2Fから3Fへの吹き抜けに大きく投影されていた There is no there (2015) は ロシア革命直後1920sのアジプロ劇団 Синяя блуза [Blue blouse] に着想したもので、 当時の Blue blouse スチル写真を思わせるボースを淡々と演じるというもの。 Blue blouse 的な服装をしておらず、そうと言われないとほとんど気付かないものになっている所が、興味深かった。 2月10〜12日にはライブ・パフォーマンスもあったようで、見逃し痛恨。

やはり2Fに展示されていた After Ghostcatching (2010) は、 振付家/ダンサーの Bill T. Jones を振付た動きをモーションキャプチャした上で OpenEndedGroup 3D動画化した Ghostcatching (1999) を、 ソフトウェアのアップデートも含めて再3D動画化したもの。 映像としても肉体を失いスケルトン化した様はまさに Ghost だけれども、 カメラワークでは実現しがたい視点の動きも面白かった。

B1階に展示されていた Goldsmiths, University of London を拠点に活動するグループ Forensic Architecture の展示は美術作品の展示ではなく、彼らの建築的、メディア的な調査手法のデモンストレーション。 2014年のガザ侵攻や現在進行するシリア内戦を対象に、 インターネットのソーシャルメディアに上がってくる写真や動画に加えて衛星写真から 時間経過や空間配置を計算して、どのような戦闘が行われたのかを詳細に分析していくというもの。 手法としてはさほど奇抜ではなく、おそらく軍や情報機関も同程度の分析をしているとは思うが、 多くの情報を丁寧に分析して混乱して実態が掴みづらい戦場の状況を浮かび上がらせていく様は興味深かった。 ソーシャルメディアの動画や写真は偽造等が無いことを前提としていたが、 今後は alt fact / fake news の判別も課題となるのだろうな、と。

このように印象に残った展示は映像作品やその扱いに関するもので、久々に映像祭らしさを感じた展覧会だった。