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Review: Peeping Tom: Vader @ 世田谷パブリックシアター (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2017/03/06
『ファーザー』
世田谷パブリックシアター
2017/02/28. 19:30-20:50.
Direction: Franck Chartier; Directorial assistance and dramaturgy: Gabriela Carrizo.
Creation and performance: Leo De Beul, Tamara Gvozdenovic, Hun-Mok Jung, Maria Carolina Vieira, Simon Versnel, Brandon Lagaert & Yi-Chun Liu.
Sound composition and arrangements: Raphaëlle Latini, Ismaël Colombani, Eurudike De Beul, Renaud Crols.
Vader is the first part of the trilogy Father-Mother-Children.
Premier: 10 May 2014, Theater im Pfalzbau.

ベルギーのカンパニー Peeping Tom の4年ぶりの来日公演。 前回2013年の For Rent を見逃しているので、 2010年の 32 rue Vandenbranden [レビュー] 以来、観るのは久しぶり。 ノンナラティヴで抽象的なダンスではなく、明確な物語は無いもののナラティヴ。 歌やセリフ (ダンサーが喋っているとは限らないが) もあるため演劇的ですらあるフィジカル・シアター作品だ。 前回観たときに David Lynch の映画を連想させられたのだが、ますます Lynch 色濃い作品だった。

『父–母–子』三部作の第1作目で、老いて高齢者養護施設にいる父親のイメージを作品としていた。 パンフレットによると老後の「後悔」をテーマとしていたようだが、それはさほど感じられず。 前に観た 32 rue Vandenbranden と同様、 日常にある不安や情緒不安定が臨界を越えて、日常が壊れていく様を描くよう。 そんな壊れゆく日常の描きかたが Lynch 的に感じられるだけでなく、 特にこの作品では、赤いカーペット、奥に背景がカーテンの舞台、 そして、そこで演奏さえるノスタルジックでちょっと退廃的なバンド、 そして日常を揺さぶるポルターガイスト、といった道具立てもまさに Lynch の世界だった。

単に舞台装置をガタガタさせたり、地響きのような音を使うだけでなく、 ダンサーが激しく身を震わせたり、長髪を振り回し続けるような動きも使っていた。 Maria Carolina Vieira などは、コントーションをしながら床をのたうち転げ回るよう。 バレエの超絶技法とは違い、グロテスクに歪んでいるが、身体能力の高さを感じさせる動きだ。 だた、そのような激しい動きはコントロール外でデタラメに動いているのではなく、 ちゃんと動きをコントロールしている。

ポストパフォーマンス・トークでも、Maria Carolina Vieira は食事の時にナイフで怪我するときもあるのに、ダンスでは怪我することは無いという話が出た。 Tamara Gvozdenovic も正確でクリアな演技を心がけてると言っており、 Brandon Lagaert も身体の極限に挑戦するということについて、体操選手と似ている、というようなことを言っていた。 まるで体操選手が新たな技を覚えるように身体のコントロールによっって限界を超えてるようで、 そんなストパフォーマンス・トークでのダンサーの話も興味深かった。