神保町シアターのゴールデンウィーク特別興行 『映画監督・成瀬巳喜男 初期傑作選』から、 この映画を観てきました。
旅回りのジンタ五人組がある町にやってくるが、 その町ではサーカスの一座も公演を打っていた。 サーカスには団長の娘2人が花形として出演していたが、 妹の澄子は団員の一人と密かに思いを寄せあっていた。 そんな中、団長と男性の団員達が仲違いし、団員がボイコットを始めてしまった。 サーカス団は、ちょうど町にいたジンタ五人組に目を付け、代理に出演させることにする。 サーカスの花型の姉の千代子は、ジンタ五人組の一人 幸吉に好意を寄せるようになる。 五人組が出演するサーカスが始まるが、ボイコット中の団員が乱入してくる。 空中ブランコ中の澄子は、その争いを嫌って、ブランコから身投げしてしまう。 澄子は大怪我でなく済み、澄子の思いを知って、団長と団員は和解する。 そしてサーカスを役御免となったジンタ五人組は再び旅回りに出た。
エノケン (榎本 健一) と並ぶ戦間期日本のコメディアン ロッパ (古川 緑波) の原作による、旅回り芸人たちを主人公に据えた映画。 ロッパ原作ということでもっとドタバタの喜劇かと思いきや、 サーカス娘2人をめぐるちょっとウェットな恋話や旅回りの悲哀を、ユーモアを交えつつ描いた、センチメンタルな人情物と言った方が良い内容でした。 といっても、ジンタ五人組のキャラも皆立っていましたし、 戦間期日本のサーカス、ジンタの様子を垣間見るようで、そこは興味深く観れました。
『女人哀愁』 [レビュー] で貧しいながら一途に洋子を愛する益田役を演じていた 大川 平八郎 が、 この映画でもサーカス娘に好意を寄せられるミュージシャン志望のジンタ 幸吉を演じていました。 これが、アメリカで俳優として活動した後、日本にもどってきた、PCL〜東宝のスター男優か、と思いつつ見ていましたが、 いい役なのに映画の中で今ひとつ目立たなく感じられてしまいました。 『女人哀愁』と共通して出演していた俳優というと、堤 真佐子。 いずれも主役に近い役ですが、松竹大船が揃えていた華のある美人とは違い、 ふっくら愛嬌を感じるタイプで、これもプロダクションの色の違いかなあと思いつつ観ていました。