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Review: ぐらもくらぶ 『これが浅草オペラだ!誕生100年「女軍出征」の再演』 @ 東京都江戸東京博物館ホール (演劇他)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2017/05/28
東京都江戸東京博物館ホール
2017/05/21, 13:00-18:00.
第一部: 復活上演!「女軍出征」と浅草オペラ・バラエティ
原案: 伊庭 孝; 企画: 大谷 能生; 監修: 小針 侑起; 演出: 中野 成樹; 音楽 海藻姉妹
出演: 洪 雄大, 福田 毅, 竹田 英司, 鈴鹿 通儀, 斎藤 淳子, 北川 麗, 佐々木 愛, 新藤 みなみ, 涌田 悠, ほか
浅草オペラ・バラエティ
山田 参助, 岸野 雄一, ほか
第二部: シンポジウム・浅草オペラ100年とその演劇性
小針 侑起, 大谷 能生, 中野 成樹, ケラリーノ・サンドロヴィッチ, 毛利 眞人

関東大震災直前の浅草で興隆した浅草オペラ。 その浅草オペラの時代の幕開けとされる浅草常盤座での喜歌劇『女軍出征』の公演 (1917年1月) の成功から100周年ということで、 この『女軍遠征』の再演を含むイベントが開催されたので、観てきました。

第一幕前半は『女軍遠征』の再演。 近年発掘され、去年刊行された小針 侑起 『あゝ浅草オペラ 写真でたどる魅惑の「インチキ」歌劇』 (えにし書房, 2016) に収録された台本に基づく上演。 演出は 台本をほぼ踏襲した上演とのことだったが、衣装や美術はむしろ現代的な日本の小劇場演劇を思わせるのもでした。 演出は 中野茂樹+フランケンズ を主宰する 中野 茂樹。 オペラ作品を上演する際も観客に物語がわかりやすいように歌を台詞に置き換えることが多かったとのことですが、 もしかしたら演出家の癖もあるかもしれませんが、 こうして作品を通した上演を見ると、歌劇というより歌の場面もある演劇に近いものだったのだなあ、と。 音楽は生演奏だったが、clarinet や brass からなる wind 楽団的な編成や編曲は jazz の影響を思わせるもの。 jazz 初録音が1917年と言われており [The Guardian の記事]、 jazz が日本へ入ってくる以前と思われる時期の作品なので、音楽の雰囲気も違うのでしょう。 戦前の大正ロマン〜昭和モダンのデザインなども好きなので、完全再現とまではいかなくても、 その雰囲気を感じられる衣装や美術だったらなあ、と、少々物足りなく感じました。

第一幕後半は、山田 参助 と 岸野 雄一 による、漫談を交えつつの歌唱ショーとでもいったもの。 浅草オペラでは、『女軍遠征』のような演目も、単独公演ではなく、バラエティショーの一演目として上演されていたとのこと。 しかし、マンガ家として知られる 山田 参助 が、その歌に合った素直な歌の旨さで、思わず引き込まれました。

後半はシンポジウム。といっても、ぐらもくらぶ側からの当時の状況の説明と関連する写真や音源の紹介が中心でした。 近日発売予定のCD 『あゝ浅草オペラ 女軍出征100年と魅惑の歌劇』 (ぐらもくらぶ, 2017) に収録されているという『カルメン』の一節を聴くことができたのですが、 その台詞の口調が、日本最初期のトーキー映画『上陸第一歩』 (島津 保次郎 (dir.), 松竹蒲田, 1932) [レビュー] での 水谷 八重子 を連想させるものだったことに興味を引かれました。 おそらく、当時の新派調なのでしょうが、演技も映画の中での水谷 八重子のようだったのかしらん、と。

しかし、シンポジウムで『カルメン』などの音源をかけた時、 会場から失笑が漏れるのはまあ仕方ないかもしれませんが、 それに迎合するかのようにパネリストが「これはマジメですか?」のように笑いを取る言い方をしていたのは、かなり不快でした。 時代や地域など異なる文化的背景・文脈ででなされた表現を、 今の自分を取り巻く表現と異なるからといって、滑稽なものとして扱っているように感じられました。 パネリストには、そこは笑うところではないと、毅然とした態度を取って欲しかったもののです。