初演から50周年を記念して再演された George Balanchine の作品が Royal Opera House Cinema Season 2016/17 で上映されたので、観てきました。 振付の型こそ伝統的なものに基づいていますが、物語無く音楽そのものを表現するかのように踊る抽象バレエ (abstract ballet) の作品です。 第1部 Emeralds は19世紀前半フランスのロマンチック・バレエ (音楽は Fauré なので時代は違いますが)、 第2部 Ruby は戦間期アメリカ ジャズ・エイジを、 第3部 Diamonds は19世紀末帝政ロシアの古典バレエと、 3つの異なるスタイルを合わせた作品です。
やはり、最も楽しめたのは、第2部の Rubies。 パーカッシヴな piano をフィーチャーした複雑なリズムの Stravinsky の音楽も良いのですが、 そんな音楽に合わせてシャープに踊る Steven McRae と Sarah Lamb が、実にかっこいい。 この2人の高い身体能力が堪能できました。 それに比べて、Emeralds と Diamonds は少々退屈するときがありましたが、 こうして並べて観ることにより、コスチュームも含めて、ロマンチック・バレエと古典バレエの違いがが際立って見えたように思います。 特に目に付いたのは、ロマンチック・バレエではチュチュではなく膝下丈のシフォンのスカートで、 群舞もきっちりフォーメンションで見せる古典バレエより緩いということでした。 全3部を前菜、メイン、デザートという比喩は言い得て妙とも思いましたが、 Diamonds はデザートにはちょっとゴージャスで重過ぎとも思ってしまいました。
初演から50周年ということで意識したのですが、この作品の初演は1967年。 カウンターカルチャー最盛期で、ロックの名盤が多く生まれた年です。 初演されたニューヨークでは The Velvet Underground が 1stアルバム The Velvet Underground & Nico をリリースした年。 そんなことを思うと、当時のハイカルチャーとカウンターカルチャーのギャップにも感慨深いものがありました。
あまりバレエに詳しくないので、なんとなく Balanchine/Millepied [レビュー] の Balanchine の方と思っていましたが、似て非なる作品でした。 イベント・シネマの中では作品を着想したというニューヨーク五番街の宝石店を紹介していましたが、 Le Palais de Cristal (1947) でも同じような色使いをしていたので、そのエピソードはある種の「伝説」なのでしょう。