彩の国さいたま芸術劇場での Benjamin Millepied L. A. Dance Project が良かったので [レビュー]、 ダンス部門芸術監督に指名される前の今年6月に Opéra national de Paris で制作した作品を “au cinema” 上映で観てきました。 Balanchine の作品とのダブルビルですが。
最初が、1947年に Opéra national de Paris で上演した Balanchine の Le Palais de Cristal。 Bizet の明快で明朗な曲に乗って、水平に広がるチュチュというクラシカルな衣装。 四楽章それぞれにルビー (赤)、サファイヤ (青)、エメラルド (緑)、ダイヤ (白) の色が割り当てられています。 各楽章毎にその色のチュチュで踊り、第四楽章の最後に大団円。 ストーリーは無く、むしろバレエの技を見せつけるような振付でした。 最初のうちはこんなものかと観ていましたが、次第に、チュチュの色のパターンと動きでみせて行く所が面白くなってきました。 四色の中では、やはり、Allegro vivace でリズミカルに踊る第三楽章の緑が楽しめました。 ちなみに、Balanchine はその後、チュチュの色を白一色とし、 タイトルを Synphony in C と改め、 Balanchine 自身が率いた New York City Ballet (Millepied の出身のバレエ団でもある) で上演しています。
続いて、Benjamin Millepied が新たに振り付けた Daphnis et Chloé。 対照的に複雑な曲で、コンテンポラリーらしい流れるような動きの多い振付でしたが、予想以上に物語バレエらしい演出でした。 L. A. Dance Project を観た直後だったので、かなり意外でした。 しかし、衣装は女性はシンプルな白のホルターネッックのドレスに、男性は白の半袖Tシャツに膝丈パンツで、エトワールだからといって特に目立つ要素もありません。 Daniel Buren の美術も単純な形状と色のみのもの。 マイム的な演技や具体的な美術ではなく、光と色と流れる動きで抽象的かつ象徴的に物語るような舞台でした。 そして、最後の群舞で Buren の美術に使われていた色が、鮮やかにダンサーの衣装に乗り移るという。
音楽や物語性、振付、衣装、バレーダンサーの階層性の有無など、何かと対照的な2作品でしたが、 この最後のカラフルな群舞を観て、どうしてこのダブルビルなのか、納得させられました。 New York City Ballet 繋がりというより、むしろ、色彩のバレエいうテーマだったのか、と。 そしてそれを通してバレエの有り様の幅を示すかのよう。 そんな所も興味深く観られたダブルビルでした。
スクリーンでバレエを観るのは、 4月の Royal Ballet: The Winter's Tale [レビュー] に続いて2度目。 通常の映画の倍はしますが、 生のバレエを観に行く敷居の高さ (チケット代金はもちろんチケット争奪戦の激しさもある) を考えると、この気楽さは魅力的だと、改めて。 午前からの上映ということもあってか、日曜にもかかわらず客が少なかったのが、少々気になりましたが。 定着して欲しいものです。