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Review: 遠藤 利克 『聖性の考古学』 @ 埼玉県立近代美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2017/09/09
遠藤 利克
ENDO Toshikatsu: The Archaeology of the Sacred
埼玉県立近代美術館, 2017/07/15-08/31 (月休,7/17開), 10:00-17:30.

1980年代から活動する現代美術作家 遠藤 利克 の個展です。 シンプルな形状の大きな木彫を炭化させたような作品など、 所沢でバイアニュアルで開催されている『引込線』 [レビュー などのグループ展で、 圧倒的な質感と存在感が印象に残っている作家ですが、 こうして美術館レベルの個展でまとめて観るのは初めて。 ある程度作風の展開を伺うことができる展示でしたが、2010年代の作品を中心とした構成で、回顧展という感じではありませんでした。

ミニマル・アートやもの派に連なる作風だと思ってはいましたが、 コンセプトというか作品を着想する源には物語的な面もあったことに、と気付かされました。 水を使った作品など炭化した木の立体以外の作風の作品も、コンセプトという面で繋がりがあり興味深くありましたが、 やはり、焼かれて炭化したマッシブな木に質感のかっこよさを堪能しました。 大きな立体作品を作る作家なので、広いギャラリー空間に、疎らに作品を並べるような展示を予想していたのですが、 ギャラリーを迷宮のように細かく区切って、1つ1つの作品が限られた空間いっぱいに広がるよう。 視野が限られて、俯瞰的な視点が持ちづらいため、 彫刻の大きさが強調される一方、マクロな形状よりもディテールに目に行きました。 特に、炭化した木の表面といっても、一様ではなく、黒くなった程度のものから、炭化が進んでぼろぼろになる寸前まで、その質感の多様さに気付かされました。