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Review: 『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』 @ 歌舞伎座 (歌舞伎)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2017/10/14
歌舞伎座
2017/10/07, 11:30-15:40.
脚本: 青木 豪; 演出 宮城 聰.
尾上 菊之助 (迦楼奈 [カルナ], シヴァ神), 中村 時蔵 (汲手 [クンティ] 姫), etc

2014年の Festival d'Avignon で『マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜』を上演した SPAC 静岡芸術劇場の 宮城 聰 が演出した新作歌舞伎。 『マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜』は2012年に観て、その祝祭的な雰囲気を楽しんだので [レビュー]、 どのような歌舞伎になったかの興味もあって観てきました。

古代インドの神話的叙事詩『マハーバーラタ』 (Mahabharata) は長大で、様々な物語が含まれています。 ク・ナウカ 〜 SPAC は物語中物語であるナラ王の物語を取り上げていた一方、 この歌舞伎は『マハーバーラタ』の全体の話の流れを生かすよう歌舞伎化されていました。 話の流れを損なわないよう、日本の中世〜近世の風俗と大きな違和を感じさせないよう見せ場を繋いでおり、その点はさすが、と。 にもかかわらず、やはり SPAC 色を感じたのは、 SPAC で音楽を手がける 棚川 寛子 の音楽と SPAC の楽団による通常の歌舞伎では使われない打楽器 (スティールパンなど) の音色のせいでしょうか。 セリフも耳に馴染んていったせいもあるのか、後半に進むにつて聞き取りやすく現代劇ぽく感じられるようになりました。 そういう意味では、宮城 聰 / SPAC らしい祝祭性を感じる作品だと思ったのですが、 戯曲中心の作品やミニマルにそぎ落とされた演出による作品なども上演される現代劇の劇場ではなく、 すでにハレのお祭り的な空間となっている歌舞伎座で上演しても、 その祝祭性が埋没してしまうよう。 上演される文脈の重要性も意識させられた鑑賞でした。