TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: Gustav Machatý (režie): Ze soboty na neděli 『土曜から日曜へ』 (映画); Otakar Vávra (režie): Krakatit 『クラカチット』 (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2017/12/17

東京国立近代美術館フィルムセンターの特集上映 『日本におけるチェコ文化2017 チェコ映画の全貌』 のプログラムで初期トーキー映画と第二次世界大戦直後に制作されたSF映画を観てきました。

Ze soboty na neděli
1931 / Czechoslovakia / 73 min. / DCP / B+W
Režie: Gustav Machatý.
Hrají: L. H. Struna (Karel), Magda Maděrová (Máňa), Jiřina Šejbalová (Nana), Karel Jičínský (Ervín), R. A. Dvorský (Pavel) a další.

あらすじ: タイピストの Máňa は遊び慣れた同僚でルームメイトの Nana に、土曜晩のブルジョワの Ervín, Pavel との食事に誘われる。 豪華なレストランで酔いが回ったところで Máňa は Ervín に一夜のための札を握らされそうになるが、彼女は拒絶してトイレに逃げ込む。 その間に Ervín は Máňa のハンドバックの中に札を忍ばせる。 Nana になだめられて Máňa は席に戻り、その後4人はレストランを出て車に乗るが、そのままホテルへ連れ込まれそうになる。 雨の中 Máňa は逃げ出し労働者の酒場へ逃げ込む。 Máňa は置いてあった帽子の上に座ってしまったことをきっかけに、偶然隣り合わせた植字工 Karel と話をする。 そのうち酒場で喧嘩が始まり、Karel と Máňa は酒場から逃げ出す。 土砂降りでスブ濡れの Máňa は、躊躇するが、結局、近くの Karel の家に行くことにする。 Ervín の誠実な態度に Máňa も次第に好意を持つようにななり、二人は結局一夜を共にする。 翌日曜、Máňa は Karel に Nana の所へ着替えを取りに行かせる。 戻った Karel は Nana からの手紙を託されていたが、その内容は「Ervín が Máňa へ金を返せと言っている」というものだった。 Karel に疑われた Máňa は Karel の部屋を飛び出し、自分の部屋に帰りガス自殺を図る。 思い直した Karel は置き忘れた Máňa のハンドバックを手に彼女の部屋へ向かうが、 スリと間違えられ警官に捕まってしまう。 潔白を証明すべく Karel は警官と Máňa の部屋へ行くが、様子がおかしく、警官がドアを破って部屋に飛び込み、窓を破って換気して、Máňa は一命を取り留める。 数日後、職場にかかってきた Karel からの電話を、親密に受ける Máňa がいた。

年頃の女性 Máňa に土曜から日曜にかけて起きた出来事を、その心理を丁寧に描いた映画でした。 それも、セリフに頼らず、丁寧に映像で描写しているのが、とても良かった。 もちろん、初期のトーキー映画ということもあって、高級レストランでのバンド演奏や場末の飲み屋の楽師の演奏、 Karel の部屋でのラジオの音など、トーキーならではの演出も。ちなみに、劇中歌2曲はヒットしたそう。

Erotikon 『エロティコン』 (1929) でのヒロイン Andrea 役の Ita Rina といい [鑑賞メモ]、 監督の Gustav Machatý は、女性を魅力的に撮るのが上手いと、つくづく。 それも即物的に美しく撮るというより–といっても、女優も美女なのも確かですが–、 映像による繊細な心理描写を通して引き込まれるよう。 Machatý の撮った最も有名な作品は Extase 『春の調べ』 (1933) のようですが、これも是非観てみたいものです。

Krakatit
1948 / Czechoslovakia / 102 min. / DCP / B+W
Režie: Otakar Vávra. Námět: Karel Čapek.
Hrají: Karel Höger, František Smolík, Florence Marlyová, Eduard Linkers, Jiří Plachý, Jiřina Petrovická a další.

Karel Čapek の1924年の同名小説に基づく、第二次世界大戦直後に制作された映画。 高性能爆薬 Krakatit (19世紀に大噴火したことで有名なインドネシアの火山 Krakatau から名が採られている) を発明した科学者 Prokop が、 発明したこをと後悔し、Krakatit を使った戦争を阻止すべく奔走するという話です。 Prokop が髄膜炎で倒れて意識をほとんど失った状態から話が始まるということもあり、 SFだけでなくミステリー的な要素もありました。 原子爆弾が発見される前に原作は書かれたものですが、映画では原子爆弾のことも意識した描写にも思われました。

時間展開が複雑に錯綜するような展開というだけでなく、Prokop の夢なのか熱による幻覚なのか判然としない描写もあって、話がかなり追いづらかったです (あらすじが書きづらいほど)。 化学反応と電磁的な現象、核反応などの違いもわかっていなさそうな Krakatit の描写だけでなく、 Machatý を観た直後だったせいか Prokop を巡るロマンスの描写も、 いまいち説得力に欠けて話に入り込めませんでした。 原作が先駆的だったということもあるとは思いますが、 最終兵器のもたらす終末 (アポカリプス) のイメージは、第二次世界対戦直後には出来上がってたんだな、と、 観ていて感慨深いものがありました。