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Review: Jérôme Bel: Gala @ 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2018/01/28
ジェローム・ベル 『Galaーガラ』
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2018/01/20, 15:00-16:30.
Conception: Jérôme Bel Assisté de: Maxime Kurvers, Simone Truong. Costumes: les danseurs.
De et par: distribution en cours.
埼玉版キャスト: 相澤 陽太, 新井 悠汰, 入手 杏奈, 梅村 千春, Elhadji Ba, 大北 岬, オクダサトシ, 金子 紗采, 川口 隆夫, 木下 栞, 佐々木 あゆみ, 竹田 仁美, BIBIY GERODELLE, 百元 夏繪, 星 遙輝, 堀口 旬一朗, 矢崎 与志子, 吉田 駿太朗, 吉村 計、李 昊.
Création: 2015.

ダンスや舞台芸術の制度をズラすような作品のフランスの振付家 Jérôme Bel の2015年の作品は、 前回の日本公演 The Show Must Go On に続いて、 上演する現地でオーディションした特にダンサーに限らない人を使っての作品。 その前の 3Abschied [鑑賞メモ] を楽しんだものの、 The Show Must Go On [鑑賞メモ] はさほど楽しめませんでした。 そんなこともあってあまり期待していなかったのですが、今回は楽しんで観ることができました。

舞台前方下手にリング中とじのカレンダーの裏にフェルトペンで手書きした「めくり」が用意され、 前半はここに書かれた「バレエ」「おじぎ」「マイケルジャクソン」などのお題を、出演者が一人一人演じていくことからはじまります。 舞台に登場するのは、バレエや日本舞踊、コンテンポラリーダンス、バトントワリングなどの身体表現のトレーニングを受けている人から、車椅子に乗った人まで、老若男女問わず様々。 衣装は最も派手な私服ということだった。 全員が一度に舞台に出ての無音での即興の後、出演者間で衣装を交換し、後半は「カンパニー・カンパニー」ということで、一人の動きに皆が真似してのダンス。 そして、川口 隆夫 (ex-Dumb Type) が率いてのダンスから全員が集結して大きく盛り上げてエンディングを迎えました。

そんな舞台を観ていて連想したのが、大道芸での客弄りです。 まず、短い演目を複数連ねて演じるような大道芸では、手作り感ある「めくり」を使うことは多くあります。 そして、観客を引き出して、踊りなどのパフォーマンスをさせたり、お辞儀も定番です。 観客の不器用な動きで笑いを取るだけでなく、子供や老人、車椅子の人など引き出して観客から暖かい反応を引き出す事も、大道芸では少なからずあります。 また、引き出した観客の持ち物や帽子、上着などを交換させて奇妙さを演出するという演出も、 、芸人が引き出した観客に同じ動きをするように求めた上で、難しいジャグリングの技をして、真似るのも恥ずかしい変な踊りを踊って、笑いを取ったりすることも、大道芸では定番です。 後半の「カンパニー・カンパニー」で、バレエダンサーやバトントワラーの動きに振り回される他の人の動きなど、 固定の「芸人」はおらずお互いがやりあう形になりますが、共通点も多くありました。 そして、最後は引き出した人たちをコラボレーションさせての感動のフィナーレは、さながら 雪竹 太郎 の「ゲルニカ」。 そういう舞台上でのフォーマットだけでなく、不器用な動きや、バレエやトワリングの動きに付いていけないことに笑いが起きたり、 子供や車椅子の人の演技に暖かい拍手が起きたり、という、観客での反応も大道芸での反応にとても似ていました。

この作品のコンセプトはさておき (おそらく舞台上の人、動きのフラットな多様性というのはあったのだろうとは思いますが)、 大道芸の客弄りの場面を集めて大掛かりにして舞台を観てるよう。そんな一時間半を楽しみました。