ヴェトナムの現代サーカスという程度の予備知識で観に行ったのですが、 旧宗主国フランスの現代サーカスの影響下で活動を始めたパフォーマー主導のカンパニーかと思いきや、 Cirque de Soleil に触発されて作られたというプロダクションによるショーでした。 といっても、分かりやすいキャラクターが登場したり物語があったりするエンターテインメント作品ではなく、 ヴェトナムの近代化、社会発展という緩いテーマはあるものの、ノンナラティヴで抽象的な作品でした。
まずは、竹で組まれた人が入るくらい大きな籠を床の上で回して上に乗ったり、長さ5mはあろう竹竿を投げ合うような、力強くアクロバティックな動きから。 女性男性と半々程度で、竹竿の投げ合いなどは男性を中心に、籠を使ったパフォーマンス(特に並べて芋虫のような動きをしたもの)は女性を中心にしていたように思いますが、入り混じってのパフォーマンスも少なくありませんでした。 最初の場面は、近代化以前の農村社会といったところでしょうか。 続いて、竹で組まれた三階建ての足場を使っての、竹籔や竹で編んだ瓶のようなものを使っての、集団でのジャグリングやマニピューレション。 天井から吊るした竹の大籠をブランコのように揺らせて、そこから宙返りで飛び降りる技も。 ここは、機械化は進んでいないものの人手による近代化が進んだ20世紀といったところでしょうか。 そして、さらに場面は変わり、足場は集合住宅となり、街にオートバイが行き交う様を、マイムやダンスによる寸劇で演じていきます。 ここからは、経済発展を遂げる現在のベトナムといったところでしょうか。 最後は、ビートボクシングによるヒップホップなビートに乗ってのストリートダンスで盛り上げて終わりました。
技はアクロバットとストリートダンス、ジャグリングで、ソロやデュオで見せるというより集団でのパフォーマンスが中心。 エアリアルのソロやデュオのような華やで優雅な見せ場が無かったのは、少々残念。 分かりやすい登場人物や物語を使わない展開ということもあってか、単調に感じたときもあったのも確か。 マイムの寸劇にユーモアの要素ももう少し欲しかったようにも感じました。 しかし、籠や籔、竹竿を使い全体として統一感を感じさせたスタイリッシュな演出はかなり好みでした。
音楽は全て生演奏で、伝統的な楽器を使った伝統的な旋律も交えつつ、ギターなども使いジャズ、ロックやヒップホップの色濃い演奏も。 伝統的な楽器音や旋律は竹を多用した舞台の雰囲気に合っていたし、アクロバティックな演技との息の合い方も生演奏ならでは。 そんな生演奏の音楽も楽しめた舞台でした。
半年前にも日本とベトナムのダンサーとコラボレーションした作品、 KAAT × 小野寺 修二 『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』 を観ていますが [鑑賞メモ]、 ベトナムのダンスやサーカスも欧米と遜色ないというか同時代的に洗練されてきているんのだろう伺われるようでした。