ソ連・ロシア映画の上映会プロジェクト KINØ と アテネ・フランセ文化センターの主催で、 ソ連の映画監督Александр Медведкин [Aleksandr Medvedkin] の1930年代の映画の 上映会があったので、観てきました。
無能な農夫「クズ」を主人公に、ロシア帝国時代から集団農場時代の変化を風刺的に描いた映画。 時代はすでに社会主義リアリズムですが、風刺画的な誇張がされた描写で、シュールというかマジックリアリズム的にすら感じます。 農業の集団化の陰の面はほとんど風刺の対象となっていないのは、この時代では仕方ないでしょうか。 2000年の上映会の時に観たことのある映画、その時に観た印象 [鑑賞メモ] と大筋ではさほど変りませんでしたが、 細部、特に後半の記憶がかなり脱落していたことに気づかされました。 内戦時の描写もあったような記憶があったのですが、実際はバッサリ字幕説明で飛ばされていて、何と混同していたのだろう、と。 バッサリ飛ばす字幕の説明が不条理で、それはそれで面白かったのですが。
1938年に制作されるも、Сталин [Stalin] の不興を買い、お蔵入りしていたという映画。 舞台は1930年代のソ連。シベリアで開発に従事する技術者 Зоя は、 当時進められていたモスクワ改造計画に憧れて作った電動式模型と映画を組み合わせた装置を モスクワの展覧会で展示することになり、モスクワに出ることとなった。 その時の話を、恋愛も絡めてコミカルに描いた映画でした。 といっても、ロマンチックコメディとしては描写があっけらかんとし過ぎて、少々物足りなく感じました。 当時進んでいたモスクワ改造の様子、教会や古い街並みが爆破で取り壊されて行く様子、近代的な橋への架け替え、道路の拡幅や地下鉄の建設、結局完成しなかったソヴィエト宮殿など、 1930年代のモスクワ改造の様子を垣間見ることができました。 2011年にモスクワを訪れたことがあり、あの街の構造がこうしてできたのかと、感慨深く観ることができました。 この映画は、モスクワ改造計画やシベリア開発のプロパガンダ映画という面もあったと思いますが、さほどプロパガンダ臭を感じさせることはなく、 近代化による生活改善の素晴らしさだけでなく、古い街並みに対する感傷も描いていました。 そんな所が逆に Stalin の不興を買ったのかもしれません。
ところで、Интернет-музей Центральная студия документальных фильмов というプロジェクトが、 YouTube Channel を作っていて、この映画を全編公開しています。 それ以外にも1920〜1940年代の映像を多くアップロードしています。