TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 『ロシア革命とグラフィック表現――ソビエト絵本とその時代』 @ 川崎市民ミュージアム アートギャラリー3 (展覧会)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2018/08/19

川崎市民ミュージアム所蔵のポスターと町田市立国際版画美術館所蔵の絵本からなる、 ロシア革命後から1932年までのポスターと絵本の小規模な無料の企画展。 Владимир Маяковский [Vladimir Mayakovsky] の手がけたポスター Окна РОСТА [ROSTA Window] や Густав Клуцис [Gustav Kurtsis] のフォトコラージュのポスターなど、 Russian Avant-Garde の展覧会で観る機会の多いものもあったけれども、 この展覧会では、лубок [lubok] と呼ばれる民衆版画の流れを汲むという、しかし、より写実的で作家性の高い版画や、 Дмитрий Моор [Dmitry Moor] など風刺画をバックグラウンドに持つような作家のプロパガンダポスターに焦点を当てていました。 もちろん、Моор のポスターにも、同時代の Avant-Garde のデザインとの共通点は感じられます。

この時期の革命ロシアのグラフィックデザインの展覧会はそれなりに観てきているが [鑑賞メモ]、 Александр Родченкo [Aleksandre Rodchenko] のような構成主義的なアヴァンギャルドのものを中心に構成されることがほとんど。 Дмитрий Моор のポスターも観たこと、さほど印象に残っていませんでした。 小規模で構成主義が控えめな企画なだけ、民衆版画風や風刺画のプロパガンダポスターも少なからずあったのだな、と気付かされました。 無料の小企画展の上、観たことのある作品も少なからずありそうだったので、さほど期待していなかったのですが、意外と興味深く観ることができた展覧会でした。