表参道界隈でバイアニュアルで開催されているダンス・フェスティバル Dance New Air [2016年の鑑賞メモ]。 今年は、7日日曜の午後に2つ、14日日曜の午後に1つの、計3つの公演を観てきました。
大野 一雄 は戦前にモダンダンスを習い、戦後、舞踊家として公演を始め、1960年代以降、土方巽と暗黒舞踏第一世代として活動した舞踏家。 戦前、日本体育会体操学校 (現日本体育大学) を卒業し、以降、1980年に退職するまで、兵役中を除き体育教師でもあったとのこと。 そんな、大野 一雄の二面性と木野自身のお茶ノ水女子大学卒業後、保健体育教師を経てダンサーとなったバックグラウンドを重ねつつ、 舞踊教育と体育教育の関係や戦間期〜戦中の体操を中心とする身体文化を実演しつつレクチャーするというパフォーマンス。 其の二の前半では「教室」の外に出てのレクチャーもありました。 ユーモアを交えつつ要領を得た話の巧さもあって、とても楽しめました。 しかし、ダンスは体操かという問題設定は、本質論的議論をするには、それぞれの対象が広過ぎて悪問だよな、と感じてしまいました。 特に、ダンスの方は、舞台舞踊、儀礼、余暇、教育などの様々な文脈の話を恣意的につまみ食いしているような感も。 体育とダンスの違いとしてアートのイデオロギーというかロマン主義的な芸術観が述べられるわけですが、 本人の中にはその結論が先にあるという印象も受けてしまいました。 ま、本人の創作の動機としては分からなくないのですが。
フランス・グルノーブルの CCN2 - Centre choréographique national de Grenoble の芸術監督・振付家としてコンテンポラリーダンスの文脈で活動する Rachid Ouramdane による作品。 左手肘から先が義手のダンサー Annie Hanauer とスピンを得意とするダンサー Lora Juodkaité。 使われるナレーションからして二人の個人的な背景に着想してるのでしょうが、演出はあくまでミニマリスティック。 スピンし続ける Juodkaité に凄さというか陶酔感を感じることもありましたが、約1時間、少々単調に感じました。
2015年からドイツ・フランクフルトで活動するコンテンポラリーダンスのカンパニー Haptic Hide を主宰する Paula Rosolen による作品。 エアロビクスの身体語彙を使った三幕物の抽象ダンス。 音楽は一切使わず、足音が音楽のように聞こえました。 ショーダンスのように音楽や照明などを使って派手にわかりやすくショーアップ演出することはせずに、ストイックに淡々としていたのは良かったですし、転びの動きも使った第二幕は面白かった。 しかし、エアロビスクとバレエの社会的な文脈の違いや制度への視点があるかと予想していたのですが、それはあまり感じられず、 フックになるポイントがあまりなく淡々し過ぎて三幕一時間余はさすがに長く感じてしまいました。