表参道界隈で開催されている バイアニュアルのダンス・フェスティバル Dance New Air から この2つの公演を観てきました。
物理エンジンを使ったインタラクティヴなアニメーション映像のプロジェクションとダンスの コラボレーションで知られるフランスのカンパニー Adrien M / Claire B。 アニメーションのソフトウェア eMotion を開発した Adrian Mondot はジャグラーでもあり、 2012年に観た Coïncidence [レビュー] では、 ジャグリングの動きとアニメーションとのインタラクションだった。 今回の Hakanaï では透明なスクリーンで4面を囲まれたスペースを作り、 アルファベットのタイポグラフィ・アニメーション、グリッド線や雨が降るような模様、ランダムなドットが投影された。 中に入った女性ダンサーが踊りながら手先でアニメーションを煽ると、アニメーションもダンスで生じた気流に乗ったかのようにたなびいていく。 白黒に色を抑え抽象度高いアニメーションを使ったミニマリスティックな演出もスタイリッシュで綺麗だった。 しかし、ジャグリングのような精度高い動きでは、物理エンジンを駆使しないとそれらしい玉と人の動きのインタラクションとならないだろうが、 Hakanaï のダンスの場合はそこまでではなかった。 予め作った映像を作ったダンス公演との差がたいして感じられなかった所が惜しく感じられた。 ちなみに、ダンスは 梶原 暁子 の出演の予定だったが、直前に健康上の理由により出演することができなくなり、Satchie Noro の代演となった。
アムステルダムを拠点に主に現代音楽の文脈で活動する piano 奏者 向井山 朋子 だが [関連レビュー]、 最近は現代美術のインスタレーションや、そこでのパフォーマンスを作品として制作することも増えている。 今回は、イタリア・ローマの Spellbound Contemporary Ballet のダンサーを使ってのインスタレーション・パフォーマンス。 吊るされた白い布の筒とgrand piano、そして、黒い袋が所々に落ちたているだけの何もない黒いスペースに観客は通される。 やがて黒い袋が動き出し、中から 向井山 とダンサーたちが現れる、 向井山の piano の演奏と若干の電子音に合わせて、観客たちの合間で、時には舞踏的にすら感じられる引きつったようなダンスを繰り広げた。 テーマは「モード」ということで、特に、haute couture (高級注文服) や prêt-à-porter (高級既製服) の 高級ファッションの約束事を俎上に上げるようなパフォーマンスだった。 そんなテーマよりも、触れんばかりの距離で踊るダンサーの印象が強烈。 小さなスペースでの公演でも同程度の距離感で観ることはないわけではないが、 服を脱ぎ捨て一見裸に見えるような肌色の衣装となっての引きつったような動きもあってか、 強烈な生々しさが感じられた公演だった。