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Review: Jean Paul-Goude: In Goude we trust! @ Chanel Nexus Hall (デザイン展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2018/12/24
In Goude we trust!
Chanel Nexus Hall
2018/11/28-2018/12/25 (無休), 12:00-19:30

1980年代初頭に Island レーベル時代の Grace Jones のレコードジャケット等、 当時の New Wave 界隈の一連のビジュアルデザインによって注目を浴びるようになった フランス出身のデザイナー Jean-Paul Goude の回顧展です。 Chanel とは1990年代初頭から仕事をしてきているようで、そんな縁もあってか、銀座 Chanel ビルにあるホールが会場でした。

Goude というと 1980s Postmodernism [関連レビュー] のデザイナという印象が強すぎて、 その頃から有名でしたが、1990年代に入った頃には自分の視界の外。 1991年に Vanessa Paradis を起用しての Chanel の香水 COCO の広告 [YouTube] を作っていた事を、この展覧会で知る程です。 そんな感じでしたので、この展覧会も会期末になるまで気付いていませんでした。 デザイン史的な位置付けを示したり作風の変遷を描くようなものではなく、 セレクションも Chanel の広告の色合いも感じる展示でしたが、会場からして仕方ないでしょうか。 2015年の Chance Chanel とか、 1980sのようには尖ってないですが、最近もなかなか良いもの作っていたのだなあ、と、気付くことができました。

会期末に飛び込んでみた一番の理由は、会場内でのパフォーマンスの噂を耳にして、これは観てみたいと。 Chanel のジュエリー Fire のためにビデオ作家 Pierrick Sorin と2001年にコラボレーションして制作した椅子に座ると映った鏡上で手や頭に火が付いて見えるインスタレーションが展示されていたのですが、 そのインスタレーションを使ったパフォーマンスでした。 白いドレスを着たダンサーが、鏡の前の椅子に座って歌ったり、その周囲を滑るように移動しつつ出て歌い踊る手振りで踊るというパフォーマンスです。

この滑るようなステップは、 ロシアの民族舞踊団 Ансамбль «Березка» の «плывущий» шаг [“floating” step] (伝統的な民族舞踊ではなく舞踊団を創設した Надежда Надеждина の振付) のようですが、会場で間近に見ると、その速さは驚きでした。 胸にマフを下げてましたし、頭部のアクセサリはロシアの伝統的な扇状の髪飾り кокошник とそれに付ける鎖状の飾り рясна に着想したものでしょうか。 バレリーナを思わせる美貌と踊りと歌のスキルの上、交代できるだけの数を揃えていたようですので、 実際に Ансамбль «Берёзка» のダンサーたちを起用していたのかもしれません。 まるで帝国時代のロシアの踊子の亡霊を見ているかのような少しミステリアスで幻想的な感が面白いパフォーマンスでした。 移動が速くコースが予想付かない上、狭い会場に観客も多く、会場が暗く展示が光っているので、写真を撮るのがとても難しいパフォーマンスでした。