戦後、アメリカと日本を拠点に活動した日系アメリカ人の彫刻家 イサム・ノグチ と、 イサム・ノグチと1950年に出会い、短いながらも影響を与え合った日本人美術家 長谷川 三郎 の二人、主に1950年前後の10年に焦点を当てた展覧会です。 書簡や写真などの交友の記録を用いる展示ではなく、主に1950年代の2人の作品からなる展示から影響を浮かび上がらせるような展示でした。
日本趣味がかった Hans Arp のようなイサム・ノグチの作品はそれなりに観る機会がありましたが、 長谷川 三郎 はほとんどノーチェックだったので、むしろそちらの作品を興味深く観ることができました。 特に第二室の1950年代前半の抽象コンポジションな墨拓刷の屏風や掛軸が、大変に気に入りました。 長谷川については戦間期のアヴァンギャルドな作風の作品も展示されていましたが、 写真シリーズ『郷土誌』 (1939) が新即物主義的な新興写真だったのに興味を引かれました。
横浜美術館のコレクション展も、企画展に合わせたかのように、抽象度の高い作品を押し出したテーマの展示になっていました。 第一室に、抽象絵画の先駆ということで、20世紀初頭の Avant-Garde の絵画・彫刻や写真が展示さえていました。 Александр Родченко [Alexander Rodchenko] なども良いのですが、日本の新興写真を含む写真が楽しめました。 『『光画』と新興写真 モダニズムの日本』展 [鑑賞メモ] ではあまり印象に残らなかったけれども 堀 不佐夫 は良いな、とか、 後に Magnum Photos で活躍する Werner Bischof も Avant-Garde 風味のヌードを撮ったりしてたのか、とか、発見もありました。 さすが、コレクションの写真展示室を持つだけはあります。 今回は第一室で写真を展示していたので、写真展示室では写真以外の作品を展示していました。
個性的というより少々癖の強い神奈川県民ホールギャラリーの空間を生かしたインスタレーションを中心とした現代美術のグループ展。 現代美術のインスタレーションというと、社会と関係するプロジェクトのワーク・イン・プログレスな展示も少なくないわけですが、 そういったものとは距離を置いた、造形に重心のある落ち着いた展示だったのは良かったです。 といっても、インスタレーションというより彫刻と言っていい作品が過半を占めてはいましたが。
スコット・アレンの “\Z\oom” は、照明を落としたギャラリーの床に光を散乱させたり乱反射させる様々な仕掛け (多分に手作り感がある) を並べ、 天井から床に向けて射た緑のレーザ光を移動させて、時々装置で散乱させて光らせるというインスタレーション。 散乱した時の光も美しいが、そうでない時のジリジリと動く緑の光点もユーモラスに感じられました。
吹き抜けの空間に大量のカラーの紙テープをぶち撒けたような 大西 康明 “tracing orbit” も力技だが印象に残りました。 力技といっても単純に紙テープをぶちまけるのではなく、紙テープがすぐに下に落ちないよう格子状に張ったテグスに紙テープをかけたりと、空間をコントロールしようという意図も感じられました。