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Review: 『『光画』と新興写真 モダニズムの日本』 @ 東京都写真美術館 (写真展); 『写真発祥地の原風景/長崎』 @ 東京都写真美術館 (写真展); 清里フォトアートミュージアム収蔵作品展 『原点を、永遠に。−2018−』 @ 東京都写真美術館 (写真展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2018/04/22
The Magazine and the New Photography: Koga and Japanese Modernism
東京都写真美術館 3階展示室
2018/03/06-2018/05/06 (月休;4/30開,5/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00)

1932-33年に発行された 野島 康三 主宰で 木村 伊兵衛 と 中山 岩太 が同人だった写真雑誌『光画』、 1930年創刊の『フォトタイムス』やその編集主幹 木村 専一 が結成した「新興写 真研究会」 (堀野 正雄, 渡辺 義雄 らが参加) の写真を中心に、 戦間期の「新興写真」を集めた展覧会。 それまでのピクトリアリズム (絵画主義) の写真とは異なる、 ドイツの Neue Sachlichkeit の写真や Man Ray ら Surrealism の写真、 Aleksandre Rodchenko ら Russian Avant-Garde の写真など、 同時代の海外の動向の影響を感じられる、写真ならではの作風がその特徴だ。 野島 康三 [鑑賞メモ]、 中山 岩太 [鑑賞メモ] や 堀野 正雄 [鑑賞メモ] など、 これまでも代表的な写真家の個展を観る機会があったが、幅広く新興写真の作家を観るのは初めて。 こんな写真家もいたのかと、発見もあった。

中でも最も印象に残った写真家は、佐久間 兵衛。 ビルを見上げたり、ビルの上から街を行く人を捉えたり、遠くから客船を大きく捉えたり。 遠近短縮法のよう、というだけでなく、 小津 安二郎 のサイレント期のノワール映画 (『その夜の妻』 (1930) や『非常線の女』 (1933)) の一シーンを思い出させられた。 小津 安二郎、清水 宏 や 島津 保次郎など、モダンな松竹のサイレント現代劇映画は、 1930年代前半と新興写真と同時代のもので、動く新興写真とも言えるかもしれない。

そんなことを思いながら展覧会を観いたら、 戦間期の松竹映画ではお馴染みのクラブ石鹸 (タイアップしていたので、その広告がよく画面に映り込む) の写真 小石 清 『クラブ石鹸』 (1931) が出てきて、ここまで被るかとウケてしまった。

Geneses of Photography in Japan: Nagasaki
東京都写真美術館 2階展示室
2018/03/06-2018/05/06 (月休;4/30開,5/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00).

東京都写真美術館は、日本における初期写真 (幕末から明治にかけての19世紀の写真) の展覧会として 『夜明け前 知られざる日本写真開拓史』という展覧会シリーズを続けていたが [鑑賞メモ]、 リニューアル前に完結し、リニューアル後の去年春は総集編だった。 今年から新たに『写真発祥地の原風景』というシリーズが始まり、「長崎」がその最初の展覧会。 長崎大学附属図書館の幕末・明治期日本古写真コレクションのデータベース公開20周年を記念した展覧会だ。 近年続けて2回ほど出張で長崎に行き、 長崎造船所 史料館 などにも足を運んでいるので、 そこで (複製を) 見た覚えのある写真もあったりした。 しかし、『『光画』と新興写真 モダニズムの日本』を観て盛り上がった直後ということで、 なかなか入り込みづらいものがあった。

Kiyosato Museum of Photographic Arts: Basically. Forever. —2018—
東京都写真美術館 地階展示室
2018/03/24-2018/05/06 (月休;4/30開,5/1休) 10:00-18:00 (木金-20:00).

清里フォトアートミュージアム 収蔵作品で構成した巡回展。 この美術館は35歳までに撮った写真を対象とした「ヤング・ポートフォリオ」というアニュアルの公募展開催し、コレクションをしてきているが、 この展覧会からの29人を含む、全95人の写真家の35歳までに撮った写真を集めている。 前期〈歴史篇〉(4/15まで) と後期〈作家篇〉(4/17から) の2期に分かれて展示されるが、自分が観たのは前期〈歴史篇〉。 年代順に並ぶので時代ごとのスタイルの流行が透けて見える面白さはあったが、35歳までという点についてピンと来るものは無かった。 展示作品が多過ぎて個々の印象は薄めだが、 2000年代以降、東欧・旧ソ連やアジア、アフリカの作家の写真も多くあり、 そういえば、あまり観る機会がなかったな、と気付かされたりもした。 名前を聞いたことがあったが公共交通機関で行きづらい場所ということもあり行ったことはなかった。 こうしてコレクションを見ると、足を運んでみてもいいかもしれないという気にはなった。