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Review: 『ル・コルビュジェ 絵画から建築へ−ピュリスムの時代』Le Corbusier And The Age Of Purism @ 国立西洋美術館 (美術展); 『林忠正 ジャポニズムを支えたパリの美術商』 @ 国立西洋美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2019/04/21
Le Corbusier And The Age Of Purism
国立西洋美術館 本館
2019/02/19-2019/05/19 (月休;3/25,4/29,5/6開;5/9休) 9:30-17:30 (金土-20:00).

国立西洋美術館開館60周年記念ということで、本館を設計したフランスのモダニズムの建築家 Le Corbusier こと Charles-Édouard Jeanneret が開催されています。 それも、彼が第一次大戦終戦後1918年から1925ばにかけて推進した芸術運動 Purism に焦点を当てた展覧会です。 Le Corbusier の建築展は観たことがありますが [鑑賞メモ]、 戦間期の Purism やその絵画作品に焦点が当たったものを見たり読んだりしたことが無かったので、新鮮に観ることができました。

Charles-Édouard Jeanneret 名義で描いた Purism 絵画はもちろん、 機関誌 L'Esprit Nouveau (1920-1925) の共同発行人で Purism 運動を Le Corbusier と共に推進した 画家 Amédée Ozenfant の絵も多く展示されていました。 また、主要な協力者であった Fernand Léger や、1925年の Art Deco 博覧会の Pavillon de l'Esprit Nouveau に展示された Juan Gris など。 Léger や Gris など Cubism の画家としても知られているわけですが、 Purism の絵画をまとめて見ていると、水平、垂直方向の線が多用され色面、形態が単純化して、De Stijl などの一歩手前の抽象度です。 初期には、断片をコラージュしたかのような Cubism の作風を装飾的と批判していたとも。 Le Corbusier が cubism の画家たちとの関係を深めたきっかけが、 親交のあったスイスの銀行家にして Cubism 絵画のコレクター Dr. Raoul Albert La Roche だったというエピソードも興味深かったです。

もちろん、同時代に Le Corbusier が手がてた建築作品、 Weißenhofsiedlung (1927) や Villa Savoye à Poissy (1929-1932) などの資料も展示されていましたが、 Purism の絵画、そして Purism 画家としての Charles-Édouard Jeanneret を知ることのできた展覧会でした。

国立西洋美術館 新館2F版画素描展示室
2019/02/19-2019/05/19 (月休;3/25,4/29,5/6開;5/9休) 9:30-17:30 (金土-20:00).

1878年のパリ万博に合わせてフランス・パリに渡り、当初は通訳として、 後に美術商として日本の美術品をパリで売る一方で西洋画をコレクションし、 1905年に帰国するも直後に死亡したという 林 忠正 の展覧会でした。 書簡などの資料が中心の展示で、林の自身の美意識が伺えるような展示でもありませんでしたが、 (そもそも近現代的な美意識がどれだけあったか)、 いわゆる鹿鳴館時代 (1883-1887) 年より前にパリに渡って印象派の作家とも交流があったということで、 資料展示で納得するというより、評伝 (鹿島 茂 『パリの日本人』 (中公文庫, 2016) で取り上げられているようです) を読んでみたいと感じさせる展示でした。