横浜美術館が開館30周年記念として開催しているコレクションに基づく展覧会です。 年代順に展開を追うようには構成されておらず、 ゲストのアーティストとして束芋, 浅井 裕介, 今津 景, 菅 木志雄 を迎え、 この4人によるコレクションではない最近の作品をテーマ代わりに据えて、 コレクションをゆるく関連付けて展示していました。 この構成にピンとくるところがあったわけではないですが、 これだけまとまった形でコレクションを観るのは初めて。 以前から写真のコレクションが充実していると思っていましたが、 Salvador Dali の三対幅 “Fantastic Landscape – Dawn, Heroic Noon, Evening” (1942/43) など シュールレアリズムのコレクションが充実していたことに、この展覧会で気付きました。
ゲストの4人のアーティストの中では、やはり 菅 木志雄 [鑑賞メモ] の作品が最も好みでした。 「モノからはじめる」というテーマでギャラリーが設定されていて、 戦間期 Avant-Garde の抽象絵画と「もの派」を繋ぐような構成で、 全体に占める作品数は少なめでしたが、シンプルにすっきり空間を構成して見せる作品は良いです。
1990年代から活動する作家ですが、グループ展などで観たことがあるかもしれませんが、作家を意識して観るのはこれが初めてです。 パフォーマンス等に利用される KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ を使い、劇場設備として既設の照明装置やスモークマシーン、客席用足場などを駆使したインスタレーションでした。
コンセプトは「むき出しとなった劇場を顕在化」とのことのようでしたが、 ミニマリスティックに光とスモークなどを即物的に体験させるというほどではなく、 半ば抽象的な舞台背景を思わせる文字が書かれ穴が開けられたパネル2組と 客席用足場2つが互いに対面するように立てられていて、天井はネオンサインが仕掛けてあり、中央のスペースは舞台のよう。 特にナラティヴな仕掛けは感じられませんでしたが、 足場に座ってスモークが吹き出、照明が点滅する様子を観ていると、 パフォーマンスが始まるところを待っているよう、 もしくは、パフォーマーは見えないけれども気配だけのパフォーマンスを観ているよう。 そんな体験が面白いインスタレーションでした。
楽屋というかドレッシングルームも会場として使われ、液晶ディスプレイを使ってビデオ作品が上映されていました。 鏡の周りの電球が全て点灯されている所などはインスタレーションとしての演出なのでしょうが、これが通常の使用状態のよう。 そこで上映されていたビデオ作品は、 スタジオや劇場のエスカレータで踊り歩き回る足元を画面半分で捉えた映像にそれを上下反転したものを残りの画面で繋げたようなものでしたが、 そこで上映されていることの妙のようなものは感じられませんでした。