2015年に初演された新国立劇場の制作による「大人も子供も一緒に楽しめるダンス作品」 森山 開次 『サーカス』。 2018年の再演も見逃してしまったのですが、 『サーカス』のメンバーからのスピンオフ的なスタッフ/出演者による TACT FESTIVAL 2019 で上演された『WANDER WATER』、『Rinne』、『MASK』など楽しんだので [鑑賞メモ]、 「大人も子供も一緒に楽しめるダンス作品」の第二弾となるこの作品を観てきました。
子供時代の忍者遊びに着想した、というより、忍者遊びした原っぱに生きる小動物 (鳥、爬虫類、両生類や昆虫) を「忍者」に見立て、 その動きや生態に着想したスケッチを連ねるような、前半後半約45分ずつのダンス作品でした。 大きな舞台装置は用いず、フロアをスクリーンにしての映像プロジェクションを駆使していましたが、ダンサーが映像に埋もれることはなし。 むしろ、高い身体能力のダンサーの動きを「忍術」として楽むような演出でした。
新体操やバレエなど異なるバックグラウンドを持つダンサーが参加して、それぞれの得意な動きでソロを見せるような場面もあるのですが、 全体としてバラバラにならずに調和しているように感じられたのは、 小動物を「忍者」と見立てるコンセプトと、映像や照明、衣装、音楽の作りだす世界観が明確に作り込まれているからでしょうか。 特に、川瀬 浩介 の擬音語擬態語や言葉遊びを駆使したキャッチーな音楽は、観終わった後も頭にこびりつく程で、作品の残す印象に大きな影響を与えます。 『WANDER WATER』、『Rinne』、『MASK』[鑑賞メモ] と、 この『NINJA』では、振付、衣装担当や映像の有無の違いなどがスタッフに共通点は多くないにも関わらず、とても似たテイストに感じたのは、 小動物に着想したダンスという類似点だけでなく、音楽による所も大きいです。
オープニングの忍者のシルエットがヤモリになって「ひっそりこっそりひっそり〜」とヤモリ這いダンスとなる掴みから引き込まれ、 新体操リボン技も使ったカエルの場面や、龍というか蛇のダンスも面白く。 コントーション的な床の技を使ったナメクジ・ダンスが少しセクシーな一方で、 舞姫のバレエの語彙を使ったダンスもキレよく凛々しさを感じるものだったりというのも良かったです。 (後になって気づいたのですが、登場するカエル、ヘビ、ナメクジのキャラクタの元ネタは、 歌舞伎の『児雷也豪傑譚話』の児雷也、大蛇丸、綱手ですね。) 後半になると、新体操の赤いリボン技のデュオで草っ原を焼き尽くす野火のダンスや、 男性ダンサー陣の力強い群舞など、ユーモラスだけではない見応えある動きが堪能できる場面もあり、 最後まで作品世界に引き込まれたまま、子供心を呼び起こさせられるような遊び心ある作品を楽しむことができました。
しかし、『サーカス』を見逃していることが悔やまれます。 森山 開次 が演出・振付した オペラ『ドン・ジョバンニ』も 年度末の万難を排して観ておけばよかったかしらん、と。