20世紀前半、スペイン出身でベネチアを拠点に活動した主に服飾デザイナーとして知られる Mariano Fortuny の展覧会です。 代表作と言える細かいプリーツのドレス “Delphos” はもちろん、 舞台美術・照明など幅広い活動を紹介していていました。 特に、Wagner に傾倒していて、間接照明を生かした繊細な照明演出を可能とするよう開発した球状の舞台背景 “Cupola Fortuny” に興味を引かれました。 ヴォルフガング・シヴェルブシュ 『光と影のドラマトゥルギー —— 20世紀における電気照明の登場』 (Wolfgang Schivelbusch. Licht Schein Und Wahn: Auftritte der elektrischen Beleuchtung im 20. Jahrhundert. 1992) では、 現代の照明を中心した舞台演出のルーツとして20世紀初頭の Edward Gordon Craig や Adolphe Appia の仕事が紹介されていますが [読書メモ]、 “Cupola Fortuny” もそれらと同時代の試みで、そんな時代を感じることができました。
もちろん Delphos も様々なヴァリエーションが展示されていましたが、 ワンピースだけでなくセパレートもあったり、襟ぐり袖ぐりの形や、サイドのガラス玉装飾など、 思っていたより多様なバリエーションが楽しめました。 Delphos ドレスの収納方法も展示されてましたが、プリーツの方向に丸めた上でゆるく捻るように丸めるというもので、 シルク素材でも変わらず、Issey Miyake の Pleats Please と同様の収納法になるのだな、と。
ランプシェードのプロダクト・デザインやテキスタイルのデザインを見ていると、 確かに戦間期のものともなるとスッキリしたシャープさを持つ Art Deco やモダニズムの影響も感じましたが、 曲線的な柔らかなデザイン、柄づかいもあり、やはり Belle epoch の時代の Art Nouveau 的なセンスの人だったのかな、とも感じました。