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Review: 『チェコ・デザイン 100年の旅』 100 Years of Czech Design @ 世田谷美術館 (デザイン展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2019/10/14
『チェコ・デザイン 100年の旅』
100 Years of Czech Design
世田谷美術館
2019/09/14-2019/11/10 (月休;9/16,9/23,10/14,11/4開;9/17,9/24,10/15,11/5休), 10:00-18:00.

Uměleckoprůmyslové museum v Praze (チェコ国立プラハ工芸美術館) のコレクションを中心に構成された、 19世紀末 Art Nouveau から東欧革命後の現在に至るチェコのデザインの変遷を辿る展覧会です。 Art Nouveau 期の Alphonse Mucha や、 戦間期 Avant-Garde の Josef & Karel Čapek [鑑賞メモ] や Karel Taige など それなりに観る機会がある有名なデザインもありますが、それらの展示はむしろ控えめにで、 共産政権時代や東欧革命後ものなど、今まであまり接する機会の無かったデザインが多く、とても興味深く観ることができました。

世紀末から戦間期にかけては、Art Deco や Art Nouveau はもちろん、 1910年代前半のチェコの前衛運動 Czech Cubism がフィーチャーされていました。 しかし最も目を引いたのは1927年に Ladislav Sutnar らによって設立された Krásná Jizba (The Beautiful Room の意) による、食器や家具、テキスタイルなどのデザインの 展示が充実していました。 装飾を排したシンプルなデザインの食器など戦後のモダンデザインのような洗練も感じますし、 赤と黒など少ない色で刷られた写真とタイポグラフィを駆使したカタログも Bauhaus か Russian Avant-Garde を思わせる格好良さで、こんなデザインが戦間期チェコにあったのか、と。

流石にナチス保護領からスターリン時代にかけてはデザインの冬の時代という感じでしたが、 1950年代後半の雪解け期から1968年のプラハの春の前後にかけて流行した Expo 1958, Brussels の Czechslovakia Pavilion から Bruselský styl (Brussels Style) と呼ばれるデザインにも焦点が当てられていました。 いかにも「ミッドセンチュリー・モダン」なシンプルながら有機的なフォルムと原色を多用したデザインで、共産圏といえども同時代性を強く感じるものでした。 その後の1970年代末から1980年代にかけて、チェコでもポストモダニズムがあったのですが、 機能主義的ながら画一的で粗悪な共産政権下での製品に対する批判という西側諸国とは違った文脈があったことにも気付かされるなど、 同時代性だけでなくその差異も興味深いものがありました。 東欧革命後は機能主義に回帰するようですが、デザインのトレンドとしてもヨーロッパとして一体化が進んだのかしらん、と。

子供向けの玩具やアニメーションについてもギャラリー1室を割いていたというのも、 人形劇やアニメーションの盛んなチェコらしいのかもしれませんが、 アニメーションなどそれだけで単独の展覧会が開けようなものですし、 むしろデザインにおけるスタイルの変遷との関係など、デザイン展らしい切り口も欲しく感じました。