韓国の伝統舞踊の国立舞踊団 국립무용단 [National Dance Company of Korea] が、 コンテンポラリー・ダンスの文脈で活動するフィンランドの振付家 Tero Saarinen [鑑賞メモ] の振付で制作した作品です。 伝統的な楽器や歌唱に electronics を交えた音楽や、重心低めの動きなど、予想以上に伝統舞踊を思わせる要素も多め。 しかし、衣装は装飾的な民族衣装ではなくモノトーンの衣装で、舞台装置は用いず照明を効果的に使う演出はコンテンポラリーダンス的にミニマリスティックでスタイリッシュな作品でした。
コンセプト的にストーリーがあるかもしれませんが、それにナラティヴに表現するというより、 動きやフォーメーションで見せる抽象ダンス作品でした。 スモークをライティングでドーム状に浮かび上がらせ、その中で力強い男性のソロをシルエットで浮かび上がらせるオープニングから掴まれました。 おそらく民族舞踊の動きを取り入れていると思われますが、 女性ダンサーたちの、腰の位置も低めにあまり上げない足捌きに、宙を掴むように手を開いて肘を少し曲げたような腕捌きも印象的でした。 ソロや男女デュオでのダンスもありましたが、やはり群舞が圧倒的に感じられました。 後半、ボレロのような上着を羽織り、背に付けた羽根状薄布を払い回しながら、女性ダンサーたちが輪になって踊る場面 (韓国伝統舞踊の太平舞に着想したのでしょうか) など特に印象に残りました。
このような作品の日本版を見てみたいようにも思いましたが、 舞台舞踊作品のベースとできるような近世まで残った伝統的な宮廷舞踊があるのか、 レパートリー化できそうな公的な舞踊団があるのとか、そういうことを考えると、かなりハードルが高いと感じてしまうのでした。