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Review: 『シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート』 @ ポーラ美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2018/12/01
ポーラ美術館
2019/08/10-2019/12/1 (会期中無休), 9:00-17:00.
Oliver Beer, Abdelkader Benchammma, Céleste Boursier-Mougenot, Candida Höfer, 石塚 元太良 [Gentaro Ishizuka], 磯谷 博史 [Hirofumi Isoya], Alicja Kwade, Susan Philipsz, Prinz Gholam, Wolfgang Tillmans, 渡辺 豊 [Yutaka Watanabe], 横溝 静 [Shizuka Yokomizo]
From the Collection: Claude Monet, Paul Cézanne, Pablo Piccaso, 東洋磁器コレクション [Oriental Ceramics Collection], etc.

フランス印象派 (French impressionists) の作品を主なコレクションとする箱根仙石原のポーラ美術館で開催された、 コレクションを組み込むような形で制作された現代美術のインスタレーション作品の展覧会です。 組み合わせの妙が楽しめたという程ではありませんが、視覚だけでなく聴覚を使いその感覚を味わう作品が多く楽しめた展覧会でした。

最も気に入ったのは、Céleste Boursier-Mougenot。 小鳥 (zebra finch) に electric guitar を演奏させるインスタレーション From Here to Ear で知られるフランスの作家ですが、 この展覧会では、水色の円形のプールに白磁のボウルをたくさん浮かべた clinamen v. 7 を出展しました。 水流で穏やかな動きがあり、窓の外の林の緑もあって、視覚的にも美しく楽しい作品というだけでなく、 ボウル同士が触れ合う際に出す澄んだ響きがボウルの大きさなどでチューニングしているのか美しいハーモニーを作り出していて、聴覚的にも美しい作品でした。 ちなみに、対比するように展示されていたのは、Claude Monet の Les Nymphéas 『睡蓮』でした。

ポーラ美術館の東洋磁器コレクションの 響きをマイクで拾って聴かせる Oliver Beer のインスタレーション Devis も面白い作品でした。 普段の展示では無いようなオーケストラ様にずらりと並べらた陶器たちが、 耳障りなハウリング音にならないぎりぎりの不穏な不協和音を響かせていました。

もちろん、音響抜きに面白い作品も。透明なガラスと鏡が嵌められた衝立を使った Alicja Kwade の Between Glances は 一見してガラスなのか鏡なのか判らない視覚的なトリッキーさを楽しむことができました。 氷河で撮影された 石塚 元太良 の写真シリーズ Le Conte_Glacier#001 も、型式的な美しさを楽しめました。 また、ピアノ曲を弾く年老いた女性たちのビデオインスタレーション 横溝 静 《永遠に、そしてふたたび》に Chopin のピアノ曲を弾く様を淡々と端正な映像で捉えて差異を静かに浮かび上がらせる様は、 ビデオによるタイポロジーを観るようでした。

野外彫刻が散在する「森の散歩道」では、Susan Philipsz の11チャネルのサウンドインスタレーション Wind Wood。 James Joyce の娘で1920年代にダンサーとして活動した Lucia に捧げられた作品で、 Lucia が好んだという Maurice Ravel の歌曲集 Shéhérazade (1904) から “La Flûte enchantée” の旋律を音符毎に林のあちこちに置かれたスピーカーに割り当て鳴らします。 音符毎に鳴らされることで旋律も分解され、林の中に響く澄んだフルートの音もはっきりと旋律が感じられるものではなくなり、不思議な響きになっていました。 丁度、紅葉が美しい季節で、小春日和の日差しもあって、とても気持ちよく感じられました。 Susan Philipsz の作品は2012年の dOCUMENTA (13) を始め度々体験していますが [鑑賞メモ]、 やはり Philipsz の作品は良いです。 ちなみに、印象派の絵を多くコレクションするポーラ美術館に合わせて印象主義の Ravel の曲を選曲したということもあるようです。