渋谷ユーロスペースでの特集上映 『バウハウス100年映画祭』のプログラムで、 戦間期モダニズムの中心地の一つ、 ドイツ・ワイマール共和国時代の芸術学校 Bauhaus [関連する鑑賞メモ] のドキュメンタリー映画2本を映画上映を観てきました。
Bauhaus の精神を今に引き継いでいるとみなした学校、ダンサー、建築・都市計画プロジェクトなどを取り上げたキュメンタリー。 Bauhaus というよりモダニズム一般の話と感じられるほど枠は緩めでしたが、 ほとんどが良い話として取り上げていましたが、 そんな中、フランスの郊外 (バンリュー) のモダニズム集合住宅の荒廃の問題という負の面も取り上げていたのが、印象に残ってしまいました。
バウハウスに学んだ女性に光を当てるドキュメンタリーです。 彼女らの仕事を再評価するだけでなく、Bauhaus にすら根強く残っていた女性差別 (女学生は希望によらず織物工房に所属させられた、待遇が低かった、等) との闘いの話も多く、そこがとても興味深い映画でした。
取り上げられた女性アーティストは、 テキスタイルの分野で活躍した Gunta Stölzl、 子供向け玩具 Bauhaus Bauspiel で知られる Alma Buscher、 女性ながら金属工房のマイスターになった Mariannne Brandt、 Terezín ゲットーや Auschwitz-Birkenau 強制収容所内で美術教育をするもそこで死亡した Friedl Dicker、 夫 László の名の下で撮影した写真を戦後に自分の作品とすべく闘った Lucia Moholy など。 中でも最も印象に残ったのは、 Alfred Arndt と結婚し Bauhaus を去ることになった後に Cindy Sharman を思わせるキャラクタを演ずるセルフポートレート写真シリーズ “Mask Portrait” (1930) を制作した Gertrud Arndt でした。
Bauhaus で活躍した女性に関しては、このドキュメンタリー映画と同じタイトルの Ulrike Müller: Bauhausfreuen: Meisterinnen in Kunst, Handwerk und Design (Elisabeth Sandman Verlag, 2019) や、 Elizabeth Otto & Patrick Rossler: Bauhaus Women: A Global Perspective (Herbert Press, 2019) といった研究書も出版されていて、その著者たちのコメントも映画の中で使われていました。 ドキュメンタリー映画もとっつきやすいですが、書籍でちゃんと読んでみたい話とも思いました。