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Review: 『バウハウス・デッサウ』 (Bauhaus: Experience, Dessau) @ 東京藝術大学大学美術館 (デザイン展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2008/05/31
Bauhaus: Experience, Dessau
東京藝術大学大学美術館
2008/4/26-7/21 (月休;5/5,7/21開;5/7休) 10:00-17:00.

大戦間のワイマール共和国 (Weimarer Republik) 時代 (1918-1933) の ドイツ (Deutschland/Germany) 国立の造形芸術学校 Bauhaus の活動を紹介する展覧会だ。 確かにデッサウ (Dessau, (Sachsen-)Anhalt, DE) 時代 (1925-1932) の物が多いが、 初期のワイマール (Weimer, Thüringen, DE) 時代 (1919-1925) の資料もあり、 Bauhaus の活動全体を知るのに充分な展覧会だ。

1990年代には、 『バウハウス —— 芸術教育の革命と実験』 (川崎市民ミュージアアム, 1994) を皮切りに、 『バウハウス1919-1933』 (セゾン美術館, 1995)、 『バウハウス ガラスのユートピア』 (宇都宮美術館, 2000) と、 繰り返し展覧会が開催されていたが、いつのまにかぷっつり途絶えて8年ぶり。 『バウハウス —— 芸術教育の革命と実験』と 『バウハウス ガラスのユートピア』は ミサワホーム・バウハウス・コレクションがベースなので、 ドイツのコレクションがベースの展覧会は13年ぶりだ。 こうして Bauhaus の作品・資料をまとめて観られるのも久々のうえ、 146点は日本初公開なので、ありがたい展覧会だ。 といっても、正直、期待ほど新鮮に楽しめたという程ではなかった。 それも、断片的ながら Bauhaus デザインの物はそれなりの頻度で観ることができる、 というのはあるかもしれない。

見どころの一つは、Bauhaus の舞台作品の再演の映像上映だ。 ロボットによるダンスのような Kurt Schmidt, Das Mechanische Ballett (1923) (Theater der Klänge による再演) や、 人形によるダンスのような Oscar Schlemmer, Das Triadische Ballett (1927) (誰による再演かは不明) は、 ダンサーの身体を覆い隠す造形的な衣裳が特徴的なのだが、 身体性で見せるバレエやダンスの文脈の表現というより、 Fortunato Depero の Le Rivista Delle Marionette (I Balli Plastici) (1918) (レビュー) のような人形劇に近いものだということを再認識。 紐を介して上から操るのではなく、ダンサーが中に入って操っているという感じだ。 今までスチルでしか観たことが無かったのだが、 動き付きで観ると、想像していたよりも単調であったが、コミカルな印象を受けた。 カバレット (例えば機械仕掛けの見世物) や サーカス等の道化とも共通するような所があるようにも感じられた。

Philippe Decouflé の初期 (特に New Order, "True Faith" (1987) ミュージックビデオの頃) って、 "Triadic Ballet" の影響が大きいなあ、というか、 Bauhaus 的な舞台の面白さをそのままに いかに身体性を加えるかという試みだったのかもしれない、とも思ってしまった。

Bauhaus Dances の Debra McCall による再現 (1984) も、液晶モニタで小さく上映されていた。 "Hoop Dance" など、黒い衣裳で人の姿を消して、白いフープを浮き立たせている。 身体性を消して動きだけで空間を作り出す所をミニマルに見せているような面白さがあった。

しかし、こういった再現映像を除くと、 舞台関連の資料は写真6点とドローイング2点のみ。 機関誌 Bauhaus の第3号 (1927) が「舞台」特集だったのだが、 それ関連の資料が全く出てこなかったのは、とても残念だった。 やっぱり、ほとんど残っていないのかなあ、と。

メインともいえるデザイン、建築関連の見どころは、やはり Bauhaus Dessau 校舎の校長室の実寸再現模型。 意外と天井が高いなあ、とか、 写真や模型、CGとは違い空間が実感できるのはやはり良い。 とはいえ、デザインや建築の展示は無難な感じで、 その鋭さがいまいち感じられなかったのも確か。 現代においては多分に一般化されてしまっているものなので、 それだけ見ても、その面白さや斬新さが見えづらい。 デザインや建築の持つイデオロギー性、 その多分に左翼的な社会変革の理念のようなものを 同時代のアールデコ (レビュー) のようなものと対比させ、 批判的な面もふくめて、もっと浮かびあがらせて欲しかった。 この展覧会を観ていて、期待したより盛り上がらなかったのは、そのせいかもしれない。

学生の課題制作も多く来ていたが、数の割に印象はあまり残らなかった。

展覧会のカタログはそれなりに充実しているのだが、 上映されていた舞台関連の映像の情報が全く載っていないのは、いかがなものかと。 当然載っているものと思い、メモはおろか、ちゃんと覚えておこうともしませんでしたよ。 うろ覚えな情報を基にウェブ検索して補完しましたが。

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