無事2022年8月までの活動延長となった新潟市のダンスカンパニー Noism [鑑賞メモ] の2019/2020シーズンの初公演です。 Noism はプロフェッショナル選抜メンバーによる Noism0、 プロフェッショナルカンパニーNoism1、研修生カンパニーNoism2の3つの集団からなり、 その前者2つのメンバーによる公演となります。 芸術監督である 金森 自身の新作と、 2018/2019シーズンまでドイツ Theater Rengensburgの ダンス部門の芸術監督・振付家を務めた 森 優貴 [鑑賞メモ] の新作からなるダブルビルです。 今まで本拠地のりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館で観たことが無かったので、これも良い機会かと、本拠地で観てきました。
前半は 金森 の新作ですが、 『クロノスカイロス1』は集団で時空を描いていくような作品、 『夏の名残のバラ』は 山田 の手持ちカメラも活用して 井関 の成熟した美にクロースアップするような作品、 『Fratres II』は15周年記念公演で上演した『Fratres I』の 金森 ソロ・ヴァージョンとでもいうもの、 と、作風やコンセプトの異なる独立した3作品を続けて上演するというものでした。 題名に「シネマ」があったので、劇映画的なナラティヴさがテーマかと予想していたのですが、 むしろ3作品に通底する共通点は、ダンス公演でよく用いられるライヴビデオプロジェクションの虚実、というか、 ライヴの映像か録画済みの映像に合わせて踊っているのか意図的に観客を混乱させるような映像使いがあったように感じられました。
楽屋からステージへドキュメンタリーかのように 山田 は 井関 をカメラで追い、 最後には、カメラを持ちながらも組み踊るわけですが、最後にカメラを客席に向けても、客席には誰もいないという『夏の名残のバラ』。 ソロで踊る 金森 のシルエットを背景に投影しているようで、シルエットと動きは完全に一致はしない『Fratres II』。 しかし、ダンサーたちが走り踊る様子を同時に背景に投影しているようで、次第にその軌跡が異なるものになる『クロノスカイロス1』の方じ、 単に差異で惑わすというより、それで時間や空間を広げていくように感じらました。 ダンサーのコスチュームもピンクで、照明も抽象的ながら色彩にあふれていました。
休憩を挟んで後半は 森 の新作。 2年前に観た振付作品が Macbeth [鑑賞メモ] だった頃もあり、 ナラティヴな作風と思いきや、自分が捕らえられた限りでは、娘と両親の物語がうっすら浮かび上がる程度。 「色彩」という意味のタイトルながら、衣装、美術に照明も彩度を抑えた演出でした。 正直に言えば演出意図を捉えそこねた感もあったのですが、 床に並べたテーブルを動かしつつ、天井から逆さ吊りにしたテーブルも上下させ、テーブルの上にダンサーを上げたりと、 幅方向だけでなく、奥行きも高さ方向も感じさせる、立体的な舞台使いはかなり好みでした。
ダブルビルを通して観て、2人の振付家の違いは捕らえ損ねた感はあったのですが、 『クロノスカイロス1』や『Farben』のような、群舞というか、 10名前後のダンサーを使って空間的な配置やリフトも含めた人の組み合わせでの表現も楽しめる作品が良いと実感しました。 日本のコンテンポラリーダンスは個の身体性にフォーカスしがちで空間使いはいまいちに感じることが多いのですが、 Noism は劇場専属カンパニーだけあって、時間空間的な表現としてのダンスに強みを感じた、そんな公演でした。