新国立劇場バレエ団の恒例の正月公演です。といっても、観たのは今回が初めてです。 Royal Opera House in Cinema の2018/2019シーズンのンテンポラリー・バレエのトリプルビル [鑑賞メモ] で Wheeldon の抽象バレエの良さに気付かされたところだったので、演目は違うとはいえ生で観る良い機会と足を運んでみました。
というわけで、目当ては休憩を挟んで後半に上演された Wheeldon の抽象バレエ Danse à Grande Vitesse 『超高速ダンス』。 フランスの超高速鉄道 TGV (Train à grande vitesse) の北線パリ=リール間開業の際に委嘱された Michael Nyman の1993年の曲に振り付けた約30分の作品で、 2006年に Royal Ballet が初演しています。 5つの Region (区間) からなる曲で、4 Region ぞれぞれにソロを取る男女の組がいて、最後の Region では4組が共に踊ります。 ソロの背景でのコールも群舞というよりいくつかの男女の組が踊るという展開が多く、 Within the Golden Hour 同様、 多様な形の pas de deux をライティングも駆使して時間的空間的に編集していくようなバレエが楽しめました。 前半で Balanchin の抽象バレエ Serenade を観ていたので、 その幾何的に整ったフォーメーションで音楽を可視化していくような振付との違いも良いコントラストになって、興味深く観ることができました。
音楽はもちろん、舞台美術、衣装も、ハイテクな超高速鉄道のイメージに合っていました。 舞台美術もメタリックながら透けて見えるパンチングメタルのひしゃげた衝立が後ろに並んでいるだけ。 ひしゃげ方が超高速鉄道の事故を連想させはしまいかと要らぬことを思ってしまいましたが、 衣装もメタリックなレオタードで、舞台美術と合わせていました。 Michael Nyman の post-classical な音楽も、高速鉄道をテーマにしてるだけあってか 反復が強調されてオーケストラやブラスをサンプリングした minimal techno に近い感触。 Region 5 では派手に打楽器も入り、映画音楽よりもダンサブル。 生オーケストラの迫力もあり、楽しめました。
さて、前半、公演のオープニングは Balanchin の抽象バレエ Serenade。 ダンサー全体のレベルが高く揃っているので、幾何的に整ったフォーメーションの群舞で見せていく展開も、繊細で美しいです。 そして、クラシック・バレエの Pas de deux でプリンシパルのダンサーの顔見せ。 正月らしく華やかめにモダン、クラッシック、そしてコンテンポラリーとバランス良く配したブログラムで、 期待以上に楽しめた公演でした。