TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 『白髪 一雄』 Kazuo Shiraga: a retrospective @ 東京オペラシティ アートギャラリー (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2020/01/13
Kazuo Shiraga: a retrospective
東京オペラシティアートギャラリー
2020/01/11-2020/03/22 (月休), 11:00-19:00 (金土11:00-20:00).

戦後1950年代に具体芸術協会の中心メンバーとして活動し、2000年前後まで活動を続けた、白髪 一雄 の回顧展です。 美術館の近現代美術のコレクション展示で観る機会も多い作家ですし、 『「具体」 —— ニッポン前衛 18年の軌跡』 (国立新美術館, 2012) [鑑賞メモ] のような展覧会もありましたが、 白髪 単独で焦点を当てた回顧展を観るのは初めてです。

具体以前の1950年前後の作品も展示されていましたし、 少ないものの『赤い液』 (牛レバーを水に漬けた作品。展示は石膏による再制作) のような立体作品の展示もありましたが、 やはり作品として見ごたえあるのは具体以降。 大きなキャンバスを床に平置きし、大量の油絵の具をぶちまけて、足で直接描く「フット・ペインティング」です。 同時代のアクション・ペインティングの影響も感じられる作風ではありますが、 赤や黒を基調とした色の太く粗く盛りあがった絵の具のマチエールから受ける力は強いものがあります。

スキージを使うなどのマイナーな変化はあるものの同じ作風の作品が続くと、 常設展などで他の作家の作品に混じって展示されているときに受けるようなインパクトはありません。 作風の変遷よりも、タイ トルの変遷の方に興味を引かれました。 コレクション展示などで観てきて無題か色に基づくタイトルが付いている印象を受けていたのですが、 1959-1964年には「水滸伝豪傑シリーズ」と名付けられた水滸伝から採られてタイトルの作品があり、 他にも軍記物 (もしくはそれに基づく歴史物の歌舞伎) から採られているのではないかと思われる 「平治元年十二月二十六日」 (平治の乱の六波羅合戦の日) というタイトルの作品もあり、 1971年に比叡山延暦寺で得度してからはタイトルに密教の用語が用いられるようにもなります。 そんな一連のタイトルに、荒々しい印象を受ける画面のイメージの源泉を垣間見るようでした。