TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 『「具体」 —— ニッポン前衛 18年の軌跡』 @ 国立新美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2011/08/19
Gutai: The Spirit of an Era
国立新美術館 展示企画室 1E
2012/07/04-2012/09/10 (火休), 10:00-18:00 (金10:00-20:00)

1954年から1972年にかけて関西を拠点に活動した前衛美術家のグループ 具体美術協会 の活動を回顧する展覧会。 代表の 吉原 治良 や、白髪 一雄、村上 三郎、田中 敦子 等の代表的な作家の 絵画作品を観たことはあるし、 大阪万博での『具体美術まつり』 (1970) をはじめとする パフォーマンス色濃い活動をしていたということも知っていたけれども、 具体美術協会だけでこれだけまと作品をまとめて観るのは初めて。 「具体」というだけでその20年近い活動を一括りで見てしまいがちだったが、 時代による変化など勉強になった展覧会だった。

やはり、最も興味深く観られたのは、最初期の野外展 『真夏の太陽にいどむ野外モダンアート実験展』 (1955) に関する展示や、 『舞台を使用する具体美術』 (1957-1958) のパフォーマンス記録映像。 野外展の出展作品やその再制作で一つのギャラリーを使って 野外展の雰囲気はこんなだったのだろうかと想像させるような展示をしていた。 パフォーマンス記録映像の画質はとても悪かったし、 そこから伺われるパフォーマンスの内容も 今観たらそんなに凄いものとは感じないのではないか、 特に空間の使い方がいまいちかもしれない、とも思ったけれども、 当時の非常に限られた技術の中でやっている勢いが感じられた。

その後、Antoni Tàpies を通して世界に紹介され、 フランスの L'Art Informel [関連レビュー] や アメリカの Abstract Expressionism [関連レビュー] などの 大戦直後の「熱い抽象」絵画の中に位置づけられるうち、 パフォーマンス的、インスタレーション的要素が後退し、 「絵画」を中心とする活動にシフトしていたことに気付かされた。 この頃の展示で最も興味を引かれたのは、グタイピナテコカ。 名を知る程度で、写真などの資料をこれだけ見るのは初めて。 「オルタナティヴスペースの先駆け」というキャプションも納得。 具体美術協会の主要作家以外の絵画をこうして観るのも初めて。 厚塗りした白い合成樹脂系絵具の上に薄く鈍い青い絵具を塗って、 円形に模様付けた 名坂 有子 「作品」 (1964) など、印象に残る作品もあった。

そして、1965年の協会会員の拡大から1972年の 吉原 治良 急死による協会解散に至る末期。 大阪万博での『具体美術まつり』 (1970) の映像は以前にも観たことがあったけれども、 一連のパフォーマンス的な活動の集大成的というわけではなく、 むしろ、新たな方向性を求めても模索という意味合いが強いものだったのだと気付かされた。 そういう面に気付くことができたのも、こういう回顧展ならではかもしれない。

ところで、美術館3階のレストラン Brasserie Paul Bocuse では、 展覧会に合わせて特別メニューを用意していた。 そこで、松谷 武判 ≪WORK 65≫ をイメージしたケーキを食べてみた。 少々値ははったが、それなりのヴォリュームと美味しさ。 このような作品をイメージしたケーキは 原美術館 の Café d'Art のものが有名だが、 国立新美術館でもこういう企画が定着するのだろうか。