1992年に結成されたジャグリングを主な技をして使うロンドンの現代サーカスカンパニー Gandini Juggling が、 COVID-19 対策で自己隔離している人々のため、そして、 COVID-19感染爆発でツアーを中止せざるを得なくなったジャグラー達ための 募金活動の一貫として、 過去の公演の動画を公開しています。 その第一弾として公開されたのが、彼らの代表作 Smashed。 2010年に初演されて以来、上演を繰り返すうちに変わってきているようですが、 今回公開されたのは、2017年に London International Mime Festival で上演された、 男性15名女性6名ものジャグラーを使い、弦楽四重奏団とオペラ歌手まで伴奏に加えての、 約80分と長い特別版です。 Smashed はトレイラー [Vimeo] も良く、 以前から公演を観てみたいと思っていた作品でした。
個々のジャグラーの技と個性に頼るのではなく、 男性15名、女性6名のジャグラーのアンサンブルとして、 また約80分はいくつかの場面からなるのですが、イメージを統一した演出がされています。 Pina Bausch オマージュ作品として知られているわけですが、 トレイラーから受ける印象ほどにはその色は強くありませんでした。 マスゲーム的展開を避け、大きなストーリーは無いものの断片的に台詞なしの演劇的な展開を含め、 80分を構成する参照点の一つのように感じました。 笑いを誘う場面もあるわけですが、そのセンスはむしろイギリス的でしょうか。 少々ノスタルジックな選曲とか含めて、オーソドックスにバラエティ的と感じる時もありました。
前半、男女が複雑に手を絡めつつ、時にダンスホールドのように組んで3つ玉ジャグリングして、 それが2組が絡む形になって、さらに大人数という展開は、 球数を増やして難易度を上げるのとは違ったパズル的な動きの妙を楽しめました。 音楽使いでは、中盤に mento (1950-60sのジャマイカの folk のスタイルの一つ) の名曲 “Jamaica Farewell (aka Kingston Town)” を使った所が最も好み。 オペラ歌手と弦楽四重奏団が登場し手から、次第に舞台の上が荒れてきて、 ジャグリングで使っていた林檎が潰れていき、ティーカップやティーポットが割られて カオスティックになって終わるという展開も良いです。
Met Opera live in HD Season 2019/20 の Akhnaten [鑑賞メモ] の幕間インタビュー映像で、 Gandini Juggling を主宰する Sean Gandini と Kati Ylä-Hokkala の顔を覚えたこともあり、 複雑に腕を絡めてのジャグリングなどのキーポイントを2人が押さえていることなど、観て気づくことが出来たのも収穫でした。
Smashed Peacock from Gandini Juggling on Vimeo.