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Review: 中村 蓉 『ジゼル特別30分版』 (ダンス / streaming)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2020/04/29

COVID-19隔離への対応として、公共劇場やメジャーなダンスカンパニーだけでなく、 ダンサーがほとんど個人制作に近い形でのストリーミングをしているものもあります。 25日土曜の昼過ぎに、そんな中からこれを観てみました。

『ジゼル特別30分版』
2020/04/25, 14:00-14:30.
YouTube URL: https://www.youtube.com/watch?v=qqVIQ8cNlps

2009年からコンテンポラリーダンスの文脈で活動するダンサー・振付家です。 今まで観たことが無かったのですが、最近はオペラ作品の振付も手がてているようでしたので (近い予定では今年7月の 二期会オペラ Lulu)、 どんな作風なのかという興味もあって観てみました。

もともと、4/24-26に神奈川県立青少年センター スタジオHIKARIで上演する予定だった ロマンチック・バレエ作品 Giselle に基づく作品を、 ストリーミング向けの特別版に仕立て直した映像です。 スタジオでの上演の様子ではなく、取り壊し直前という生活の痕跡の残る木造民家を舞台としていました。 約30分の間、美術や照明の仕込みの狭い民家の中を部屋から部屋へ移動しながら踊ります。 映像はワンショットで移動しながらダンサーを追うもの。 照明や壁に書かれた絵やメッセージの異化作用はもちろん、 日常の雰囲気の残る木造民家に対するダンスの異化作用に加えて、 広角レンズで歪んで見える空間や手ブレなくヌルヌル動く視点もあって、シュールで面白く感じました。 LAND FES の日常の俗っぽい場から別世界へ連れていかれるかのような雰囲気 [鑑賞メモ] を思い出したりもしました。

バレエにはよくある酷い男の中でも筆頭格とも言える Albrecht が出てくる Giselle が元ネタで、 Albrecht の犠牲者とも言える Giselle を女性の視点から描くことは予想していたのですが、 まさか Myrtha がクラブもママとして登場するとは、その意外さもあて大ウケしてしてしまいました。

30分という長さ、ワンショットによるライブに近い感覚などもあって、没入して楽しめたように思います。 劇場公演が出来るようになった際には、映像と見比べて観たいものです。