絵本作家として知られる ヨシタケシンスケ ですが、2013年の絵本作家デビュー以前は、 「カブリモノ」シリーズ (1992-1997) のような不条理な被り物というかメカ様の立体造形を現代美術の文脈で制作しており、 そのアイデアスケッチが発展して絵本になったという感もありました [鑑賞メモ]。 そんなヨシタケシンスケと1929年設立の現代人形劇の劇団プークが2020年にコラボレーションして新作を作ったということを最近になって知り、遅ればせながら観てきました。
絵本デビュー作でもある原作『りんごかもしれない』 (2013) はストーリー展開がある物語絵本ではなく、 むしろリンゴをきっかけに少年が様々な妄想というか連想を繰り広げるような「発想絵本」です。 振付のクレジットがある程、出遣いという以上に人形遣い自身の所作も使った演出で、 そのイメージの連想さながらにリンゴからの連想が変容していく様を舞台化していました。 原作というだけでなく舞台の美術デザインもヨシタケシンスケが手がけているのですが、 絵本以前に立体造形の作家だっただけに、その美術のセンスと人形劇との相性は抜群です。 この作品単発で終わらせず、この路線でのヨシタケシンスケの活動に期待します。
『わにがまちにやってきた』は1985年初演 (2009年に新演出しているようですが) のレパートリー演目ということで、 『りんごかもしれない』と比べると出遣いながら比較的オーソドックスな演出に感じられましたが、 安定の面白さでした。