イギリス Royal Shakespeare Company がコンピュータゲームの技術と劇場技術の融合を実験した オンラインのライブパフォーマンスを上演していました。 Royal Shakespeare Company といえば、2010年に Twitter をメインとしたソーシャル・メディアで上演した Such Tweet Sorrow がとても面白かったので [鑑賞メモ]、 また何かやってくれるのかという期待もあって、観てみました。 結果としては肩透かしの感もあったのですが、今回は実験的な習作ですし、こういう試みは結果としてはあまり良くなくても、積極的に体験しに行きたいものです。
将来のより大きな作品に向けての work-in-progress、実験的な習作というべき作品で、上演時間は約30分。 Epic Games 社の Unreal Engine を使って描いた仮想の世界を体験する作品です。 William Shakespeare: A Midsummer Night's Dream 『夏の夜の夢』 に着想したとのことですが、主人公としてこの中の登場人物である Puck を使っているという程度。 明確なストーリーはなく、ナレーションのような台詞がある程度で、Puck に導かれて仮想空間の夏の夜の森を彷徨います。
技術的には、俳優の演技をモーションキャプチャで捉えて、 パーツが半ばバラバラに分かれたデッサン用モデル人形のような Puck や 他の登場するクリーチャーをライブで動かしていきます。 背景は夏の夜の森 (大荒れの嵐の場面もある) もあらかじめ描いた3Dアニメーションでなく、 物理エンジンを用いてライブで描いていきます。 観客もマウス操作などを通して、描かれている状況にインタラクションすることも可能です。 音楽の方も、世界の描写とインタラクションしているとのこと。 ラスト近くでは、俳優が動き動かされてキャプチャされている様子と、その仕上がりの映像を同時に見せるというメタな演出もありました。
因果不明な出来事の連続という程度で明確なストーリーが無く、 半ば抽象的なアバターの動きを通して鑑賞していることもあるのか、 セリフや表情で演技による演劇というより、身体の動きを通したマイムなどのフィジカルシアターの表現に近いものを感じました。 インタラクションについては多くの人が同時に操作していることもあり、 操作とその反応の関係がわからず、音楽も含め、リアルタイムでのインタラクションの面白さは感じられませんでした。 インタフェースとしてはFPS (First Person Shooting) / TPS (Third Person Shooting) ゲームに近いという程度は想像できたものの、 ほとんどゲームをしたことが無くリテラシー不足は否めず、3Dアニメーションを鑑賞しているのと変わらない体験になってしまいました。