新国立劇場のコンテンポラリー・ダンスのオムニバス公演シリーズとしては、 自らの振付作品の発表の場である『DANCE to the Future』がありますが、 2020/2021シーズンは男女デュエットのみを集めたダンスのオムニバス公演『舞姫と牧神たちの午後』。 日本のコンテンポラリーダンスの文脈で活動するダンサーから4組に、 新国立劇場バレエ団からの2組を加えた6組が出演しました。 同趣旨の公演は2003年、05年以来とのことですが、観るのは今回が初めてです。 日本のダンサーはあまり観られていないので、これも良い機会かと足を運んでみました。
休憩を挟んで前半3組、後半3組で1組あたり15〜20分程度。 いずれも、舞台装置はほぼ用いず、ブラックボックスにライティングのみでダンスを際立たせる演出でした。 新国立劇場バレエ団の2組は、 心理劇的な雰囲気もあった『Danae』とダイナミックな『Butterfly』と対照的でしたが、 ロマンチックな所作やデュエットならではの高く軽やかなリフト技はさすがです。 前半後半の2組目、『かそけし』と『Let's Do It!』はコミカルな作品でしたが、 『かそけし』が『牧神の午後』 Afternoon of a faun の動きを参照したり楽屋に突っ込んだりとメタな部分が多めなのに対し、 『Let's Do It!』が男女異性装ながらも音楽の楽しさが動きにもストレートに生かされていました。 音楽に名前演奏を使ったのは『かそけし』と『極地の空』ですが、 『かそけし』がギター一本ダンス同様に舞台に絡む一方、『極地の空』では暗く落ち着いた舞台の後ろに控えて。 そんな感じで多様な舞台を楽しみました。
しかし、圧倒的に印象に残ったのはラスト、 Crystal Pite の 2010年初演の The You Show に含まれた4作品中の1作品 A Picture of You Falling からの抜粋です。 男女の微妙な関係を思わせる所作に着想して構成されたようなダンスで、 ナレーションとそれが変形された電子音に合わせた動きなど The Statement [鑑賞メモ] を、 倒れた人への人の絡み方、相手に手を伸ばす動きなど Body and Soul [鑑賞メモ] を連想させられ、Pite らしい作品。 ex-NDTの湯浅 永麻 & 小㞍 健太 による動きも変にロマンチックさを感じさせないシャーブさで、 感情表現と客観的な描写、物語性と形式的な面白さが、絶妙に両立していました。 抜粋じゃなく、これだけで全編通して観たかった作品でした。