2019年に Royal Opera House in Cinema で観た Flight Pattern や Nederlands Dans Theater 来日公演で観た The Statements を手掛けた カナダの振付家 Crystal Pite が Ballet de l'Opera national de Paris で制作した2019年作が、 NHKオンデマンドでストリーミングされたので、Crystal Pite への興味もあって観ました。
3幕構成で、第1, 2幕は 第1, 2幕は、倒れた人とその脇で狼狽もしくは悲嘆する人の組を鍵に、 争ったり混乱したりする群衆の動きのイメージを重ねる展開で 絡み合った群集での動きは Flight Pattern [鑑賞メモ] も思わせます。 テキストを静かに読み上げる声を電子的に変容させていく音使いは The Statement [鑑賞メモ] のよう。 ここまでは今まで観た Pite の作品との共通点も感じられるものだったのですが、 第3部がいきなり昆虫ディスコという様変わりで面食らい、腑に落ちない後味でした。
第1幕は舞台装置なしでダウンの照明のみのミニマリスティックな演出。 衣装は最初黒コートでしたが、次第に上半身が白い下着だけに。 倒れた人とその脇で狼狽もしくは悲嘆する人の組が3回示されるのですが、 冒頭はの場面では横たわる男と脇で落ち着かない様子の男という組で、横たわっていた男が起き上がり手を伸ばすが深刻な雰囲気ではありません。 中盤では横たわる女とそれを静かに起こす男という組が出てきますが、寝ていた女性を起こすような親密な雰囲気。 第1幕最後の場面は、横たわる男と脇で取り乱す女、男は死んでいるよう。 そんな変奏が面白く感じられました。 その間の群舞は、争ったり混乱したりする動きの群舞ですが、 特に混乱の場面では戦場や暴動・革命を描いた古典絵画を活人画化したようにも感じられました。
第2部は衣装は第1部の上半身白下着の状態のまま、照明に変化があり、 舞台後方にスタンドで照明を並べて後方からの光の中で踊る場面が多くなります。 動きも同じようなモチーフが多用されましたが、 音楽が Chopin のピアノ曲 «24 Préludes, op.28» となり、 (男女だけでなく男2人の場合もありますが) 2人で組んで踊る場面が多くなり、 音楽もあって雰囲気はグッとロマンチックに感じられました。
第3部はうって変わって、金張りのバックに、音楽もディスコ風 (1970sのものではなく2000年代の音楽ですが) で、 ポップミュージックのステージダンスを思わせるダンスも。 衣装も頭部まで覆う黒光りするボディスーツ姿にトンガリ頭に手に長い爪様のものを付けており、 まるで蟻の群れが踊るように見えます。 そんな中、上半身がクケリのような長毛で顔まで覆われた男性ダンサーがソロで登場します。 このソロのダンサーと群舞する昆虫との関係は、そもそも第1, 2幕との関係は、と考えているうちに 第3幕が終わってしまいました。 第1, 2幕で描いた人間社会での摩擦や混乱は、昆虫社会にもある普遍ということなのかもしれないですが、 そうだとしても少々唐突で飛躍がありすぎるように感じられました。