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Review: Le Veronal / Marcos Morau (choreo.): Sonoma @ Palais des Papes à Avignon, France (ダンス / streaming)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2021/08/08
Palais des Papes à Avignon, France
25 juillet 2021.
Direction artistique et chorégraphie: Marcos Morau
Avec: Alba Barral, Àngela Boix, Julia Cambra, Laia Duran, Ariadna Montfort Nùria Navarra, Lorena Nogal, Marina Rodríguez.
Textes: El Conde de Torrefiel, La Tristura, Carmina S. Belda.
Conseil dramaturgique: Roberto Fratini
Musique originale: Mônica Almirall, Marcos Morau, Juan Cristóbal Saavedra.
Scenographie: Bernat Jansà, David Pascual. Lumieres: Bernat Jansà. Costumes: Silvia Delagneau.
Première: 24-26 juillet 2020, Sala Oval, Museu Nacional d'Art de Catalunya.
ARTE Concert URL: https://www.arte.tv/fr/videos/104766-000-A/sonoma-de-marcos-morau/
Disponible du 28/07/2021 au 25/08/2021

スペイン・カタルーニャはバルセロナのカンパニー Le Veronal が Festival d'Avignon 2021 メイン会場 Palais des Papes で上演したダンス作品です。 カンパニーのバックグラウンド等の知識は無かったのですが、 Festival d'Avignon 芸術監督 Olivier Py のチョイスを信頼して、 ARTE Concert の劇場中継を観てみました。 衣装や音楽にヨーロッパ各地の民族衣装や民族音楽の断片を交えて、 語られるテクストからして戦争や病気の厄災に対する叫びを、 8人の女性ダンサーによって、シュールレアリスティックなイメージで描く約75分の作品でした。

冒頭の場面ではロシアのベリョースカ (Берёзка, 『白樺』) で有名な滑るような歩行を使っていますし、 音楽にもブルガリアのポリフォニーやロシアの民謡も使っていて、東欧色が強め。 後半になると、聞こえてくる音楽だけでも、地中海風の民謡、グレゴリオ聖歌、印象派の音楽、さらには最後には Meredith Monk 風までと広がります。 衣装も、モダンでミニマルなものではなく、民族衣装をベースに色を白黒にして装飾も抑えて抽象化したよう。 音楽や衣装に比べてダンスの動きは民族舞踊を思わせるものはあまりなく、 早い動きと止めを強調してギクシャクとした踊りが多用されていました。 ただ、ミニマリスティックにダンスを見せる作品ではなく、 被り物のマスクや花冠の様な道具も活用して、 厄災に対する叫びの様な活人画的なイメージをシュールレアリステックに連想で繋いでいくよう。 人形やマジック的なトリックは使っていませんが、 Philippe Genty [鑑賞メモ] とも共通するものを感じました。 その舞台上のイメージだけても十分喚起されるものはあったのですが、 セリフというか語られるテクストがあるのですが、フランス語で字幕がドイツ語のみで、その理解には厳しいものがあったのは、少々残念でした。

観た後に興味を引かれて、バックグラウンドを少々調べてみたのですが、英語で書かれたものとしては、この記事 Clàudia Brufau: “Marcos Morau: Sonoma, Surrealims and me” ( Springback Magazine, 10 November 2020) が最も参考になりました。 この記事によると、Marcos Morau はバレンシア出身の1982生、訓練されたダンサーではなく、La Veronal 結成は2005年とのこと。 Sonoma は、 Ballet de Lorraine に振付した Le Surréalisme au service de la Révolution (2016) [teaser (Vimeo)] のリプリーズ (主題の反復) とのことで、そちらにも興味を引かれました。

Now for something completely different...

ARTE Concert では Festival d'Avignon 2021 関連企画 [ARTE Concert] として、 Sur le pont d'Avignon という9編の短編ダンスビデオからなるシリーズを制作公開しています。 有名な “Sur le pont d'Avignon, l'on y danse, l'on y chante” の歌をテーマに 9組のパフォーマーとミュージシャンによって作られたダンスビデオです。 アヴィニョンの街のあちこちでサイトスペシフィックに踊られたダンスを収録していて、 アヴィニョンの街の雰囲気を楽しめる内容にもなっています。 中でも最も良かったのは、Rachid Ouramdane, Nathan Paulin et Malik Djoudi [ARTE Concert]。 Malik Djoudi の音楽、Rachid Ouramdane の振付でサーカスパフォーマー Nathan Paulin が Palais des Papes [教皇庁] の塔の間で綱渡り (high wire) をするというものです。 撮影にはドローンを使っているのでしょうか。 パフォーマンスといい、眺望といい、素晴らしいです。

ARTE Concert の短編ダンスビデオシリーズといえば、 2020年12月から今年2020年5月にかけて18編公開された ARTE en scène もお勧めです。いわゆるコンテンポラリーダンスだけでなく、 アクロバット、バランス芸、ヴァーティカル・ダンスなど現代サーカスの文脈のパフォーマンスが半分近くも含まれています。 中でも興味を引いたのは、Kiki Béguin [ARTE Concert]。 バーレスクのバックグラウンドを持っているダンサーで、 このビデオも踊りながら脱いでいくというストリップ (striptease) のフォーマットを取っているのですが、 林の中で換羽していく鳥のようで、もはやストリップであることも忘れそうです。